「決めたことを正解にしようじゃないか」 与田剛氏が“宝物”とする原監督の教え
2009年の第2回WBCに投手コーチとして参加「たくさんのことを教わりました」
昨季まで3シーズンにわたり、中日を指揮した与田剛氏。現在はエグゼクティブアドバイザーとして、立浪和義監督をサポートする。「あれも反省、これも反省。今もドラゴンズの試合はほぼ見ていますが、見るたびに『もう少しこうやって立浪に渡してやりたかったな』と思うんですよ」。そう言うと、広い肩をすくめながら申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「僕の3年間の監督経験は反省が多い」と振り返るが、「信念と愛情だけは絶対に持っていよう」という想いは貫いた。そして、監督として過ごした3年間、幾度となく思い出し、自分に言い聞かせた言葉がある。
「決めたことを正解にしようじゃないか」
2009年、第2回WBCで投手コーチを務めた時、日本代表を率いた原辰徳監督にかけられた言葉だ。「あれからずっと心の中に残っている」というほど、強く響いた。
「普段の生活でも何か選択する場面は必ずある。何気なく決められるものはいいけれど、胃が痛くなるような選択に迫られた時、選択肢を決めた後はそれを正解とすることだけを考え、努力するということですよね。WBCでコーチをした時も、ドラゴンズで監督をした時もそうでしたが、どちらか決める時は迷いもあるし怖さもある。でも、選択する立場になったら、自分が決めたことを信じて貫くしかない。選手時代も色々な監督さんから教わったことがありますが、指導者として携わった原監督からはたくさんのことを教わりましたし、あの言葉はずっと僕の宝物として残っています」
投手コーチとして駆け出しの頃。自分の決断や選択にしっかりと責任や根拠を持てるよう日々、準備を積み重ねた。
「なぜその選択をしたのか、聞かれた瞬間にちゃんと理由が言えるように準備しました。WBCの時も『ブルペンは今、どうだ?』と聞かれた瞬間、『○○でいきましょう』と判断するための材料を、日々の練習の中で長時間をかけて観察しながら積み上げる。それが難しさでもあり、快感でもあり。選択がピタッとハマった時はたまらないですよ。もちろん、プレーしているのは選手ですし、選手が結果を出してくれたことが一番。でも、そのいい結果に少しでも携われたことが指導者としての醍醐味なんです。結果が出なかった時は次への反省材料としながら、それでも選手が結果を出して喜ぶ姿を常に考えていました」