米国では田中将大の動向はいまだ五里霧中 見事に貫かれている「秘密厳守」の交渉劇の結末はいかに
ここまで情報が漏れない交渉も珍しい
交渉期限の1月24日午後5時(米国東部時間)が刻一刻と迫る中、新ポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指す楽天・田中将大投手を巡る報道が途切れない。メジャー関係者や米メディア関係者が口を揃えるのが、「ここまで情報が漏れない交渉も珍しい」ということだ。おそらく、日本メディアも同じ思いを抱いているだろう。交渉の進ちょく状況はもちろんのこと、本人の希望がなかなか見えてこない。交渉した球団にも秘密厳守を求める徹底ぶりは、見事としか言いようがない。
旧ポスティングシステムの場合、最高入札額を提示した1球団だけが、当該選手と交渉できたため、「最高額を払う球団=契約球団」という構図ができあがった。だが、新制度では設定された入札額を払う意思を示しさえすれば、何球団でも選手と交渉できる。つまり、今回の場合で言えば、移籍金2000万ドルを支払ってのフリーエージェント(FA)のようなもの。連日「カブスは年俸2000万ドル以上の用意がある」、「ダイヤモンドバックスは6年1億ドル以上の条件提示」といった報道が続くが、新制度の場合、必ずしも「最高額を払う球団=契約球団」という構図ができあがるものではない。
複数球団と交渉ができる場合、もちろん年俸など金額の大きさも重要ではあるが、それ以上に、選手本人が何を求めているのか、が大きく物を言うだろう。それは、年俸の大きさかもしれないし、いかに早く世界一を獲得できるか、かもしれない。あるいは、コーチやスタッフなど投手に関するプログラムに重点を置くかもしれないし、本拠球場が投手有利なのか打者有利なのかにこだわるかもしれないし、家族のことを考えて住環境を最優先させるかもしれない。
だが、田中の場合、本人の希望がほとんど見えてこない。今回の秘密厳守の態勢も、田中本人の希望によるところが強いという。その観点から見ると、「ケーシー・クロースを代理人に選んだことは正しい選択」とメジャー関係者は言う。デレク・ジーター(ヤンキース)やクレイトン・カーショウ(ドジャース)を顧客に持つクロース氏をよく知る人物は、「人当たりがよく、会えば一般的な話はするけど、自分が関わる交渉に関してはヒントすらも漏らさない秘密主義」と語る。