中学生が2年間で「球速20キロアップ」は可能か 佐々木朗希ら“伸びる逸材”の共通項

岩手・東朋中軟式野球部の練習の様子【写真:川浪康太郎】
岩手・東朋中軟式野球部の練習の様子【写真:川浪康太郎】

将来的に140キロ超を投げるには? 中学野球指導者・鈴木賢太氏が培った“ノウハウ”

「たまたま一緒の空間にいさせてもらっただけで、『育てた』のではなく最初から素晴らしい選手でした」。“令和の怪物”と称される佐々木朗希投手(ロッテ)の岩手・大船渡市立第一中軟式野球部時代のコーチだった鈴木賢太さんは、そう謙遜する。とはいえ、逸材と接した経験は指導者としての財産。現在は大船渡市立東朋中軟式野球部(東朋野球クラブ)で、培ったノウハウを生かし、中学生の指導に当たっている。

 鈴木さんは2012年秋から2020年冬まで、母校の大船渡一中でコーチを務めた。佐々木をはじめ、岩手県選抜選手や選抜チームでもエースを担う選手たちを間近で見ながら、直近では仙台育英(宮城)の甲子園優勝に貢献した仁田陽翔投手(現立正大)、花巻東でエースナンバーを背負った北條慎治投手(現青学大)らを指導した。

 鈴木さんは「たまたま素晴らしい素材の選手が数人出ましたけど、その分たくさん失敗もしてきました。ただ、素晴らしい選手たちと関わらせてもらう中で、『これをやればより良くなる』『こういう選手は上で通用する』といったことは、わかるようになってきました」と話す。

 中でも、投手の球速アップについては「入学してすぐにいきなり10キロ上げるのは難しいけれど、2年で20キロは上げられる」と自信を持つ。現に、中学入学当初は「ボールはそこそこで、1年生にしては投げられる」程度の印象だったという佐々木は、110~120キロの球速を141キロまで伸ばした。

 鈴木さんはその上で、「私の役目は単なる『つなぎ』で、目的は中継地点までバトンを届けること。中学生のうちに125キロ前後を投げられる投手は、高校に進んで体ができて硬式球に慣れれば、10~15キロは上がるはず」と口にする。高校で佐々木は141キロから160キロ、仁田は136キロから151キロ、北條は129キロから145キロまで球速を上げた。

東朋中軟式野球部コーチの鈴木賢太氏【写真:川浪康太郎】
東朋中軟式野球部コーチの鈴木賢太氏【写真:川浪康太郎】

高校へバトンつなぐための“爆発力”と「型にはめない」指導

 球速を出せる投手の共通点は「エネルギーを出す方法を体が知っている」こと。走力やジャンプ力が高く、一瞬でエネルギーを出す「爆発力」のある投手は、球速が伸びる傾向にあるという。

「爆発力」を鍛えるため、まずは走る量を多くして負荷のかかる運動に耐えうる持久力をつける。その後立ち幅跳びや「ケンケン走り」で上半身と下半身、右足と左足の連動の仕方を覚えさせながら、メディシンボールやタイヤ、チューブなどを使った瞬発系のトレーニングにも取り組ませる。練習は過酷だが、怪我予防をしつつ段階を踏んで作った下地が高校での成長につながる。

 また下地を作った上で意識しているのが、「型にはめない」ことだ。現代の野球界にはさまざまな指導論があり、YouTubeなどを通して簡単にそれらに触れられるため、選手には「いろいろなやり方をとことんやって、合わなかったら別のやり方をすればいい」と伝える。

 投球指導の際は、身体に負担が大きい投げ方でない限りは、「軸足に体重を乗せよう」「体重移動をしっかりしよう」「投げ終わりをかっこいいかたちにしよう」などと、基本的な助言のみ送りさまざまな角度で見るよう心がけている。

「中学での野球を高校野球につなげてほしい。行った先々でレベルアップして彼らの評価が上がればうれしいし、自分も『負けていられない』という気持ちになります」と鈴木さん。関わる教え子全員のバトンをつなぐべく、これからも試行錯誤を続ける。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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