パ最強の強肩捕手は? 二塁送球タイムトップ5は鷹・甲斐が4位まで独占

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

しのぎを削る二塁盗塁を巡る争い、昨年日本シリーズは「甲斐キャノン」が話題に

 二塁盗塁は、シングルヒットや四死球などによる一塁への出塁を二塁打に昇華させる。アウトカウントを犠牲にすることなくチャンスを拡大できる貴重な戦術だ。

 ただし、失敗すれば、出塁そのものがふいになるリスクもある。二塁打と未出塁では大違い。その成否が試合の戦局を大きく揺るがすことさえある。ゆえに、走る側も防ぐ側も必死にしのぎを削っている。

 その中でも注目されるのが、捕手が投球を捕球してから二塁ベースに入った野手に到達するまでに要する「二塁送球」のタイムだ。昨秋の日本シリーズでは、広島の田中広輔内野手らが積極的に二盗をしかけたが、ソフトバンクの主戦捕手・甲斐拓也が矢のような二塁送球でことごとく阻止。シリーズの流れを大きく呼び込んだことが評価され、最優秀選手(MVP)に選出された。

 このときの鬼気迫る二塁送球が、「甲斐キャノン」という異名で話題になったことは記憶に新しい。そんな魅力あふれる捕手の二塁送球はどの程度のタイムなのか。今年のパ・リーグにおける開幕から5月末までの計測で、上位5位に入ったものを紹介していこう。

 まず、5位に入ったのは、オリックスの正捕手として定着しつつあるプロ6年目の若月健矢捕手が記録した1秒89の二塁送球だ。山岡泰輔投手の投球を捕球するとともに体を回し、飛び跳ねるようにモーションを起こすと、そのときにはもう腕を振ってボールをリリースしている。そのくらい流れるような素早い動作である。

 しかも、送球は二塁ベースのやや上あたりへ。一塁走者の金子侑司外野手(西武)がスライディングしてくる足の行く手をドンピシャでふさぐピンポイント送球で、見事アウトにした。おそらく、本人にとっても満足できる送球だったと思われる。

 ここで、捕手の二塁送球におけるタイムの一般論を述べておこう。1990年代頃から現在に至るまで、プロの目安としては、「2秒を切ること」といわれてきた。

 この目安は、「俊足の一塁走者がスタートしてから二塁ベースに到達するまでに、ベストに近いスタートがきれた場合は3秒50前後」といわれているのがベースになっている。それに対して、投手のクイックモーションが1秒30、捕手の二塁送球が2秒ジャストであれば、二塁送球を捕球した野手がタッチする時間の0秒10~20程度を加えても3秒40~50となり、走者と勝負できるという算段だ。

 つまり、投手と捕手が完璧な仕事をすれば、計算上、二塁盗塁はほとんどすべて刺せるというわけだが……。敵もさる者。一塁走者は投手のモーションを巧みに盗んでフライイング気味にスタートすることで、3秒50をさらに縮めようと試みる。その技術もわずかながら年々レベルが上がっているため、昨今では完璧なスタートを切られた場合、捕手が1秒90台を普通に出さないと刺すのが難しくなってきているのが現状だ。

 その意味において、若月の1秒89は、一塁走者が俊足の選手でいいスタートを切った場合でも、投手がしっかりクイックモーションをしてくれていれば、100%近く刺せる好送球だったといえるだろう。
 
 刺された走者が、2016年パ・リーグ盗塁王だった金子侑であったことからも、それが証明されたスローイングだった。

4位以上は甲斐が続々と…

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