楽天のサクセスストーリーの中心にいる「嶋基宏」という男
野村克也監督から徹底的な英才教育を受ける
この男がいなければ、楽天の初優勝はなかったかもしれない。躍進を遂げたチームの中で、嶋基宏(28)の存在はそれだけ大きかった。天性のリーダーシップを発揮しながら若手を力強く牽引する姿は、田中将大(24)とともに被災地・東北の復興の象徴にもなったと言える。
だが、球界屈指の捕手になるまでの道は決して平坦ではなかった。26日開幕の日本シリーズでも鍵を握るチームリーダーの真の魅力とは、一体どのようなものなのだろうか。
大学生・社会人ドラフト3巡目で入団した2007年、嶋は当時楽天を率いた野村克也監督からレギュラーポジションを与えられ、徹底的に英才教育を受けた。試合中にベンチで指揮官の横に立たされ、説教される姿は、スポーツニュースなどでも頻繁に取り上げられた。これは、もちろん期待の表れだったわけだが、2年目の出番は初年度の125試合から85試合へと激減する。さらに、続く2009年も定位置を確保できず、楽天は初のクライマックスシリーズに進出したものの、嶋のスタメン出場はなかった。
「せっかく我慢して(最初の)1年使い続けたのに、成長していない」
要求が厳しい野村監督は事あるごとに、そう漏らした。
ただ、ここでへこたれない強さを嶋は持っていた。投手が打たれれば、まず自分のリードを責める。当時から「あそこは違うボールでいくべきだった」と潔くミスを認め、決して人に責任を押しつけようとはしなかった。