元DeNA久保康友が独白、“激動”の1年を振り返る メキシコの打者は「技術力凄い」
メキシカンL挑戦1年目で奪三振数&投球回はトップ「三振を取ってアウトにするしかない」
今季、メキシカンリーグのブラボス・デ・レオンでプレーした元DeNAの久保康友投手。気圧が低く、打球が飛ぶため投手には不利と言われる環境でシーズンを通して先発を務め、26試合8勝14敗、防御率5.98、154奪三振、投球回152イニングの成績を残した。
奪三振数、投球回はともにリーグトップ。開幕投手を務め、チームのエースとしてフル回転した右腕は、メキシコの打者について「技術力はすごい」と明かす。その理由とはいったい何なのか。日本との打者との違いとは。この1年を振り返ってもらった。今回は【野球編】の第1弾。
――日本の野球とメキシコの野球の違いは?
「まず、標高が高いところにある球場が多いことですね。僕が所属していたレオンは標高約1800メートル。メキシカンリーグには南北計16チームありますが、そのうち8チームが標高1000メートル以上のところにある。キャンプが行われたグアダラハラという街も標高約1550メートルで、最初ブルペンで投げ込みをしていた時も、酸素が薄くて肩で息をしていたんです。そんなこと今までなかった。
気圧が低いぶん、変化球も落ちないし曲がらない。レオンで投げる時は、カーブの落差は低地の半分くらいでした。外野で打撃練習の球拾いをしていても、低地なら外野の定位置へのフライになる打球が、簡単に本塁打になる。グアダラハラで初めて打球の伸びを見た時は、低地と比べてここまで差があるんだと驚きました。夏場の雨季に入る前までは空気も乾燥していたので、前半戦のレオンでの試合は本当に打球がよく飛びましたね」
――毎週のように低地と高地を行き来して、標高差のある中でマウンドに上がっていました。
「日本にいた時は標高差を気にしなくていいので、登板前のブルペンは1度でしたが、メキシコに来てからは、前回の登板場所から標高が変わる時は2回以上ブルペンに入り、変化球の軌道を毎回確認して試合に臨んでいました。街によって気候も違うので、体調管理は大変でしたね。しかもバス移動だと、冷房がめちゃくちゃ効いていて寒くて、運転手に頼んでも、ほかの人は暑がっているからと言って上げてくれないので、車内では真冬の格好をしました。
あと、うちのチームにはリーグで100勝を挙げている元メジャーの43歳のベテラン投手がいたのですが、彼は低地では球持ちのいいカーブ、高地では頭の上で早めにボールを離して意図的に落差をつけるカーブと、2種類の投げ方を標高によって使い分けていました。敵チームにも、高地と低地で配球を変えている投手もいましたね」
――そんな中で奪三振王に輝きました。
「僕は元々、打たせて取るタイプの投手です。ただ、メキシコの場合、日本と比べて守備のレベルが低く、打球に飛び込むような選手も少ないですし、日本ほど打者ごとに的確に守備位置を変える訳でもない。守備のレベルは日本の2軍よりも下。しかも一部の人工芝の球場を除き、グラウンドもデコボコで、イレギュラーが本当に多い。日本ならゴロアウトになる打球でも、メキシコだとヒットやエラーになってしまうんです。これではいくら打たせても、アウトが奪えない。防御率なんて、本当に運なんですよ。日本なら3-2の投手戦になるような試合が、メキシコなら同じ打球で6-5くらいの試合になる。それなら、もう自分で三振を取ってアウトにするしかないと考え、走者がいる時以外は三振を狙うピッチングをしていました」
――ほかの投手に比べ、投球回、球数も多かったですね。
「キャンプの時も、2日連続のブルペン入りや、100球を超えただけで驚かれました。海外の選手は下半身を使わない上体投げの選手が多いのですが、自分の体に合った、理にかなった負担のかからない投げ方なら、何球でも投げられると思うんです。でも、メキシコではコーチ陣が球数を管理していて、試合でもなるべく連投させないように配慮する。本来ビハインドの状況で出てくる投手がセットアッパーのポジションで登板し、打たれて逆転されるような試合も結構多かったですね」