松井秀喜氏、特別インタビュー(下) 高木京に贈る言葉、そして自身の今後
自身の今後、“親友”ジーターのマーリンズ共同オーナー就任は?
選手生活を終えて5年がたつ。米大リーグ、ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏は傘下のマイナーリーグで打撃指導を担当する充実の日々を送っている。編成にも携わる現在の仕事や、日本球界への思いなどについてニューヨーク州にある1Aスタテンアイランドの本拠地で聞いた。全3回の特別インタビュー。第3回は「高校の後輩・巨人高木京、そして自身の今後」について。(聞き手・江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授、神田洋)
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松井氏がマイナーで指導したこともあるアーロン・ジャッジ外野手、ゲーリー・サンチェス捕手は、メジャーでスーパースター候補生として華々しいスタートを切った。若手選手にとって、かつてのヤンキースの主軸打者と過ごす時間は、貴重なものとなっている。そして、ゼネラルマネジャー特別アドバイザーとしての日々は、松井氏本人にとっても、今後の野球人生へ向けての貴重な経験となる。
新しい選手の台頭だけでなく、大リーグは変化を続けている。テクノロジーの進歩や新規則の導入があり、元同僚のジーター氏がマーリンズを買収してオーナーになるという驚きのニュースもあった。
「大きな変化と言えば、かつて薬物がどれだけまん延していたか。僕の1年目から薬物検査はあったが、罰則ができたのは2年目だった。それから規定が厳格になり、ようやく正常になった。そういう意味で良かった。チームメートにも公の場で筋肉増強剤の使用を認めた選手がいたし、殿堂にグレーの選手がいても不思議ではない。そういう時代だったと考えるしかない。
テクノロジーの進歩にはついていっていない部分がある。球の回転数などを数値化しているが、皆どう活用しているのだろう。興味はあるし、やるのはいいと思う。ただ自分はそういう時代の選手でないから、分からない。選手はそこまで気にしなくてはいけなくなったのか。僕が打撃で気にしたのは、投手攻略のための打席でのアプローチと自分の打撃。ほぼその2本の柱だけを意識していた。むしろ余計な情報は入れないというタイプだった。今の立場で他人の打撃を指導することになり、ビデオだけはよく見るようになった。ダッグアウトからではコースや投球の軌道が分からないから。
ヤンキースは規律という意味ではそんなに変わっていない。ジョー・ジラルディ監督がやろうとしていることは、ジョー・トーリ監督時代のチームとそれほど違わないはずだ。ただコア・フォー(ジーター、ポサダ、リベラ、ペティットの生え抜き4人)がいなくなった。それが大きな違い。彼らほどトーリ野球を体現していた選手はいない。キャンプでタンパに行ったときに4人がいない違和感はある。
ジーターがオーナーになるのは楽しみ。これから何をやってくれるのか。感じとしてはバスケットボール界のスーパースターでNBAホーネッツのオーナーにもなったマイケル・ジョーダンに近いと思う。オーナーとしてどこまで野球に携わるかが楽しみ。一番仲のいいポサダがマイアミにいるし、あの2人は一緒に何かやるかもしれない」