大学野球の全国大会でも使い手が出現 スローボールは武器の一つとして定着するか
計測不能なスローカーブを駆使して相手打線を抑えた駒大・東野
そして3か月後、同じ全国の大舞台でスローカーブで打者を手玉に取る大学1年生が現れた。明治神宮大会・大学の部で優勝した駒澤大学の左腕・東野龍二投手が、決勝の相手となった明治大学打線にスローカーブを投げ込んだ。相手には大学3年で史上初めて100安打に到達した来秋のドラフト1位候補の高山もいた。神宮球場では90キロ以下のボールが表示されない。計測不能な80キロ台のゆっくりなボールを投げ込んだ。5回を無安打無失点投球。優勝に大きく貢献した。
夏の甲子園で東海大四・西嶋がスローボールを投げているのを東野はテレビで見ていた。
「投げていて気持ちいいだろうなと思っていました」
東野もスローボールが球場の雰囲気を一変させ、会場を味方にできることを知っていた。ただ、西嶋が「打者をイライラさせればいい」と打者をあざむくという見方で投げていたのに対し、東野は自チームの守備のことを考えていた。
「スローボールを投げることで打者を心理的に追い込めれば、打ち損じることが多いと思う。味方の守備も『凡打になる』と思ってもらえる。守りも気持ち的に楽になり、リズムも出てくると思う」と守備側にとって心理的にプラスに働くと分析。大阪の履正社高校時代ではセンバツ出場経験はあるが、エースではなかった。その時から取り組んできた技術は、今年の夏頃にようやく試合で使えるくらいになったという。
メジャーリーグや日本のプロ野球だけでなく、高校、大学の全国の舞台でも見られるようになった。これも技術の向上、努力の賜物だろう。世間にも認知されたこのボールが今後、投手の大きな武器の一つとして、定着していく可能性も十分にある。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count