川崎宗則が愛された理由 カナダっ子が恋に落ちた魅力とは

「数字に表れない貢献度」とトロントのファンと通じ合う心

 川崎人気を支えるのは面白いキャラクターだけではない。ひたむきなプレースタイルと野球に取り組む姿勢が根底にある。

 元々、トロントの野球ファンは泥臭いイメージの選手を好む傾向にある。2011年まで所属したジョン・マクドナルド内野手も同じタイプの選手で、ユーテリティープレーヤーながら人気は絶大だった。リベラ内野守備コーチは川崎について「練習熱心で細かいプレーを怠らない。野球に取り組む姿勢が尊敬を集める理由の一つだ」とみる。

 全体練習前に川崎に内野ノックを打つのは日課となった。アンソポロス・ゼネラルマネジャーは「相手投手に球数を投げさせることができる。数字に表れない貢献度がある」と打撃面も評価。途中出場でも集中力を切らさずにプレーし、試合に出ていないときでもベンチで声を出して参加する。ひとたび代打で打席に立てばボールに必死に食らいつく。そんな姿をファンやチームメートは間近で見てきた。

 恋愛で例えるなら、普段と違う一面を見せたときの「ギャップ」が異性の心をつかむようなものだろうか。川崎がニューヨークでのデレク・ジーターに匹敵するほどの人気を得た理由も、その辺りにあるのかもしれない。

 報道によると、シーズンオフに日本に一時帰国中の川崎は来季も米国でプレーする可能性が高いという。トロント地元メディアは「メジャー契約を提示すれば、川崎は戻ってくるのではないか」とラブコールを送り、川崎も「好きな野球をしているだけなのに頑張ってと言ってもらえる。本当にありがたい」とトロントへの愛着を常々口にしていた。

 大リーグでは12月に入り、大物選手の移籍が活発となる中、マイナー契約での年内合意の可能性も浮上する川崎。果たしてどんな結末が待っているのか。たとえ決別しても、再会を果たしても、一つだけ変わらないものがある。野球少年の気持ちを忘れない川崎の心はトロントのファンとつながっている。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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