オリックス大補強の舞台裏 改革を託された男の哲学(上)
ストーブリーグは「4勝3敗」、キーとなる中島&小谷野の獲得
「一昨年のドラフトで獲った奥浪、園部、吉田、若月、あの辺りの選手たちが核となるチームがたたき台として1つ、頭にあった。それで去年のドラフトは絶対に必要な左の即戦力を1位でいきます、と話しました。2位も『左でいけ』という声もあったんですが、僕の中では野手の方が5年10年と出てこないというのがあったので、宗にいきたかった。もし山﨑が競合して外れたら、僕は外れ1位は宗がいいと思ってました。それで社会人の即戦の左ピッチャーを2、3人くらい獲れれば均衡も取れますから。
あとは、本来は高校生のピッチャーを2位か3位のどちらかに入れなければいけないという話もしていました。当日は集中力が必要になるし、シミュレーションを何回もやって臨んで、それで佐野を3位で獲れた。僕らは松本(裕樹)、小野(郁)、高橋(光成)、佐野をビッグ4としてカテゴライズしていたので、3位で第1希望みたいなのがきちゃったわけですよ。3位まででもう85点、90点でしたね」
その後も着実に有望な選手を指名でき、将来のエース候補の獲得も含めてドラフトは理想通りの結果となった。全てを終えた後は森脇浩司監督からも感謝されたという。
だが、指揮官を喜ばせたのはドラフトだけではなかった。ストーブリーグではFAの宮西尚生、成瀬善久、大引啓次らの獲得を狙ったが、いずれも失敗して当初は「0勝3敗」。しかし以降は“4連勝”でキーとなる選手たちを次々と獲得していった。その最大のターゲットの1人が中島だった。
「今回僕が理想としたのは自立した精神を持っているチームでした。どんなに補強しても、選手がお金だけもらって満足しちゃうようなチームでは勝てないし、成熟する必要がある。選手たちが自分たちで考えて行動できるようなチームにしたかった。それができるのが中島なんですよね。中島はセオリー通りいかないタイプで感性や閃きがすごくある選手だから、僕は彼がほしかったんですよ。彼にもそう説明しました」
加藤氏はそう説明する。西武や阪神が争奪戦で先行しているとの報道もあったが、綿密に情報収集をしていたオリックスサイドに焦りはなかったという。中島の気持ちがオリックスに傾いていると知ると宮内義彦オーナーに直談判し、球団として一気に攻勢をかけるよう促した。結果が明るみになった際はオリックスが電撃獲得した印象もあったが、実は水面下で交渉をリードしていたのだった。