新聞×テレビ!? 高校野球の「次世代型メディア」が今夏誕生へ
視聴者を食い合わなかった要因は? 統合サイトが秘める大きな可能性
テレビ需要とインターネット需要が食い合わず、逆に相乗効果で数字が上昇した事実は業界内にも少なからず衝撃を与えた。
これに関し、昨年、同サイトの事業戦略策定ならびにその開発を実施し、今年のプロジェクトでも同様の業務を委託されているリムレット社の黒飛功二朗代表取締役社長は「日本ではインターネット上で、100年もの歴史があるクオリティコンテンツが配信されること自体がまだまだ特殊なケース」と前置きした上で、「高校野球のコンテンツパワーは計り知れない。メディアが視聴者を取り合うどころか、まだまだファンを掘り返すポテンシャルを感じている。スポーツコンテンツに重要なリアルタイム性をインターネット上で担保してあげることで、トータルでは既存メディア接触に還元される。つまり、昼間にバーチャル高校野球を見た人が、夜にはテレビで関連番組を見たくなるだろうし、土日にはテレビでしっかりと試合中継を見たくなるかもしれない。そういう好循環を生み出せる可能性が高い」と分析する。
新聞社とテレビ局が協力し合い、一つのコンテンツを作るという異例の取り組み。その対象が長い歴史を誇る人気コンテツだけに、当初は多くの障壁もあったが、ユーザーにより良いコンテンツを届けようという関係者の思いが統合サイトの実現へとつながった。新たな「バーチャル高校野球」には昨年のサービスに朝日新聞が持つ豊富なテキストコンテンツやデータが加わり、本大会だけでなく、地方大会の決勝戦約20大会も中継動画を配信する予定。中村氏も朝日新聞とともに構築する統合サイトに、「より多くの人に触れてもらって、競技をやってみよう、競技をやっている選手を支えてみようというような行動喚起につながればいいと思う。そういう起爆剤になることがこのサイトの目的」と大きな期待を寄せる。
高校野球を軸にして始まろうとしている次世代型メディア。高校野球誕生100周年の今年、その記念すべき第一歩が刻まれる。三橋氏は「朝日新聞だと夏しかない。春をはじめ秋季大会やその他がんばっているところをどうするんだというのもある。なので、ユーザーにとって、関わる人にとって一番良い所に集約して、みんなが参加できるっていうふうにしたらいいんじゃないかなというのがそもそも発想していたこと」と話しており、今年は期間限定で実施となるサイトが「夏」の枠を超えて、高校野球全体を巻き込んでいくことも十分考えられる。将来、高校野球の統合メディアとして年間を通じて稼働するようになるかもしれない「バーチャル高校野球」は大きな可能性を秘めている。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count