金本監督が求める阪神鳥谷の長打力 新しい打撃アプローチは不振の要因か
長打志向を強めた結果、自らのヒットゾーンを失ってしまう結果に
長打を求める意識は、生まれる打球にも影響を及ぼしているようだ。まず“引っ張り”の傾向が強まっている。「一塁(ライト)線からフェアグラウンド側に30°」のゾーンに収まった打球は、2014年が全体の29.6%、2015年が27.2%と推移してきたが、今季は34.0%へと上昇。センター、レフト方向に飛ぶ打球を減らしている。例年より引っ張りにかかっており、強い打球を打とうという意識が見てとれる。
では、その引っ張りは効果を生んでいるのか。鳥谷が打ったフライとライナーのうち滞空時間(バットに当たってから地面に落ちるか、グラブに収まるまでの時間)が、安打になりやすい「3秒以内」に収まったものをフィールド上にプロットしたのが次のイラストだ。高く上がった易々と捕れるフライ以外の打球が、ヒットになっているかどうか見るためのものとなる。
センターからレフト方向への打球が減少していることがわかる。センターから左へ、やや低めの弾道で逆らわずに打球を飛ばしヒットを打つ鳥谷の姿は、ファンにはお馴染みのものではないかと思う。だが、それが今季減っているのである。
昨季の646打席で、「滞空時間3秒以内」「センターからレフト方向」の打球は52本あり、39本がヒットになっていた(.750)。今季は359打席で、打球は14本しかない。ヒットは10本である(.714)。
このほかにも、外野へ放った全フライのアウト率が、昨季の74.4%から82.8%へと大幅に悪化するなど、長打量産を目指したモデルチェンジが、鳥谷のヒットゾーンを失わせていることを示唆する数字が出ている。