巨人・坂本、停滞から脱却か? 打者としての進化裏付ける大きな変化とは
内角への強さはそのままに外角への対応も向上の兆し、打者としてのピーク近づく
最後に、投手の投球に対する坂本の対応も見ておこう。図は投手視点のもので、1枚目がこの3年間のゾーン別の打率、2枚目が同じくISO(Isolated Power)を示したものだ。ISOは長打率から打率を引いた数字で、長打をどれだけ打てているかをつかむためのものだ。
坂本が内角球に強い印象はあると思うが、全般的にその通りの結果が出ている。内角に寄れば寄るほどに長打が生まれており、ボール球すらも長打にしている。このあたりの傾向は、今季何かが大きく変わっている様子はあまりないようだ。
ただ、打率の図からは、外角も含めやや広いゾーンのボールを安打にできている様子が多少うかがえる。ISOの図からも、これまではあまり見られなかった、外角低めの球を打って長打が出ていることがわかる。ISOが0.139を示している外角低めのストライクを、今季はすでに5回二塁打にしている。昨季は年間で1回、2014年は2回だったことを考えると、うまく打てている様子はある。
得意な内角にボールが来なくても、安打を打つ力をつけつつあることに加え、ボールゾーンスイング率(ボール球をスイングしにいく割合)を2014年から29.4%→28.0%→26.1%と年々低下させ、それにともない四球の数も増やしている。フライの質の向上の件とも合わせ、対戦相手からすればかなり攻略が難しい打者となってきている。打者としてのピークが近づいてきているといってよさそうだ。
※1 「すべてのフライ」とは、全打球をゴロ、フライ、ライナーに分けたうちのフライ打球を指す。フライとライナーに関しては、バットに当たってから捕球、もしくはグラウンドに落ちるまでの滞空時間を用いて分別している。
※2 ここでいう内野フライは、「内野手が取ったフライ」ではない。本塁から外野フェンスまでを8等分にゾーン分けし、そのうち本塁に近い3つのゾーンで捕球されたか、グラウンドに落ちたフライ打球を「内野フライ」と規定している。
※3 外野フライは本塁から外野フェンスまでを8等分にゾーン分けし、そのうちの遠いほうからの5つのゾーンに飛んだフライ打球を意味する。
【了】
DELTA●文 text by DELTA
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2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~4』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート5』(http://www.amazon.co.jp/dp/4880653845/)を2016年5月25日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)もシーズン開幕より稼働中。