再び野球熱取り戻すために― 復興地・石巻が「一枚岩」で続ける活動とは
野球人口の拡大を目指し、世代間交流
石巻圏のある地域では震災前に8つあった少年野球チームが2つに減っている。中学校の野球部も合同チームで大会に出場するなど減少傾向にあり、市内の高校の野球部員不足も顕著だ。そんな状況から「みんな、危機感はあったと思う」と松本副理事長は話す。
石巻工がセンバツ大会に出場した時、震災で傷ついていた街は希望に沸いた。一方で競技人口は減り続けた。「盛り上がった雰囲気を下げたくなかった」との思いから、震災から3年後の14年春、石巻地域の小学生から社会人野球まで11団体が連携を図る石巻野球会議が発足した。
中心の石巻市は小、中、高校に加えて大学、社会人野球チームまである。「(地方では)大学や社会人もある珍しい地区。震災後、人口が減り、小学校も中学校も高校も何かしら危機感は持っていた。1つになって何かしようという時に大学も社会人も協力してくれたのは大きい」と石巻市在住の松本副理事長。東松島市(旧矢本町)出身の石巻野球会議・内海利彦会長(東北地区野球連盟会長、宮城県野球協会会長)は「野球が盛んで、『石巻地区から甲子園へ!』という思いがある地域だからまとまりやすかったと思う」と分析する。野球で街を盛り上げようという機運が高まり、地域のアマチュア野球が一丸となった。そして、野球人口の拡大を目指し、世代間交流を図っている。
その中のイベントの1つが石巻野球フェスティバルだ。子どもから大人まで、みんなが楽しめる催しをということで、講師と受講者に分かれる野球教室ではなく、ストラックアウトやスピードガンコンテスト、ロングティーコンテストといった“遊び”で交流を図る。日本製紙石巻の西川一樹トレーナーによる小学生でも楽しんでできるトレーニング講座やミズノの遠山義宏氏によるグラブのお手入れ講座も同時進行。また、野球未経験者のためにティーボールを行うスペースも用意され、3歳と6歳の姉妹や小学1年の男の子などが野球に“入門”。打ったり捕ったりする楽しさを体感していた。