「ラミちゃん」捨てたDeNA新米監督 なぜ球団初のCSに導けたのか
「普通」のことを「普通」にやり抜く「凡時徹底」の強さ
もちろん、信頼を寄せたのはロペスだけではない。経験の少ない若いチームが自信を持ってプレーする上で、信頼が重要となることを指揮官は知っていた。潜在能力を持ちながらくすぶっていた山口をエースに指名し、自己最多の11勝へと導いた。野手陣でも球団の顔に成長した若き主将・筒香には「うちの4番ではなく、日本の4番だ」と自尊心をくすぐり、打撃2冠を後押しした。
桑原、宮崎、倉本、戸柱といった若手にはシーズン終盤、「うちのスタメンの半分は今年初めてレギュラーとなった選手。監督がこれ以上、ものを言うとさらに重圧を感じてしまう」と少々のミスや不振では決して苦言を呈することなく起用し続けた。選手を信じ、能力の最大限を引き出す。それが、ラミレス野球の象徴となり、いつか失速するだろうという周囲の評判をよそに、シーズン終盤でも息切れすることなく戦い抜いた。
そして、9月19日の広島戦(横浜)。雨中の試合を制し、DeNAは前身の大洋時代を通じて初の外国人監督によって、歴史的なCS出場権を獲得。本拠地を埋め尽くしたファンの歓喜に包まれた。
外国人でありながら、日本の高校野球でよく使われる「凡事徹底」という言葉を好んだラミレス監督。ミスをミスと認めて反省し、自らを支えるコーチ、選手を信じてタクトを振るった。現役時代から得意だったという相手の配球分析をはじめ、対右左や球場ごとの成績など、あらゆるデータを駆使した野球上の采配は極めてオーソドックス。ことさら監督色を出し、変化を求めたがる指揮官もいる中、信念を持って「普通」のことを「普通」にやり抜く強さが背番号80を支えていた。
来季に向けて「優勝を争えるチームを作りたい」と19年ぶりのリーグ制覇を掲げている。誰もが知っている「ラミちゃん」は、もういない。その姿は「勝負師・ラミレス」そのものだった。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count