将来は指導者も…パドレス斎藤隆氏が46歳でインターンシップになった理由

新人研修初日でいきなり「リーダーシップ論」の講義

「1Aには去年は15回ほど行きましたね。メジャーのホームゲームがない時に、オフィスを4時くらいに上がって、車で2時間ドライブして。アリゾナにある球団施設にも、スプリングトレーニングとシーズン中、そして秋季リーグと計3回行ったかな。アリゾナは片道6時間のドライブ。よく行きましたね(笑)。

 今はいろいろな角度から野球を学びたくてフロントオフィスの勉強をさせてもらっているけれど、僕は将来的にグラウンドに立つことを全く拒否したわけではない。そこにいずれ行きたいと思うし、自分が一番得意なところだと思う。ただ、こうやってメジャーのフロントで働かせてもらえる機会はそう巡ってくるものではない。なので、今はフロントという立場から見る野球を学んでいきたいですね」

 ドラフトされたばかりの選手が集まる新人研修(ウインターワークアウト)に参加した時には、その研修内容に日米の違いを見たそうだ。

「プロに入って最初に受ける研修で受ける講義が『リーダーシップ論』。新人にいきなり『リーダーシップとはなんぞや?』というのを学ばせるんですよ。1週間のミニキャンプのうち初日だけじゃなくて2日目も。まだプロとして一度もプレーしたことのない、今後どう成長するか分からない新人にそういう研修をすることに、最初はすごく違和感を感じた。でも、いきなり本質を突くというか、超ド直球でど真ん中をついてますよね。

 日本だったら、研修で教わるのは、メディアの対応だったり、先輩後輩の礼儀だったり、球団の訓示だったり。そうじゃなくて、リーダーシップ論。1人1人に『自分がチームを引っ張っていくんだ』っていう意識付けをさせる。彼らは集まった新人の中から1人でも多くの優秀なプレーヤーを輩出したいから、選手育成のスタートをリーダーシップ論で切るんですよ。

 メジャーで監督をする人の中には、選手として実績のなかった人がたくさんいる。マイナーでキャリアを終えた人もいる。それでも名監督が生まれる背景には、新人の頃からリーダーシップについて意識させる育成方法があるからだと思うんです。日本とアメリカの文化の違いかもしれないけど、面白いでしょ」

 今年はパシフィックリム(環太平洋)地区のアドバイザーとしてスカウト活動も学んでいくという斎藤氏。選手時代に日米両国でプレーした経験、そして今フロントとして野球と接している経験は、自身の財産となるだけではなく、将来的には日本球界にも還元され、さらなる発展に向けての力になるに違いない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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