筒香と監督の合言葉「ムシカ」とは…映像監督が語るDeNAナインの素顔
指揮官がミーティングの最後にかける「ムシカ」の意味とは……
――筒香は主将について「本来、そういうタイプではない」と言っている。
「作品のインタビューの中でも言っていますが、『チームを勝たせる4番』というものへのこだわりがすごく強い。実際に映像を見返してみると、凡打して戻って来た選手がいたら、ちらちらと見ているのが映っているんです。常にチームを気にかけている。打っても『勝たせられない4番』にはなりたくないんだろうなと。25歳の若さで、人の一歩も二歩も先を見ているんだろうなと感じるし、すごく大人ですね」
――チームは就任1年目のラミレス監督の下で躍進した。指揮官の印象は?
「佇まいが1年目から既に『監督』でした。春先に最下位で苦しい時期が続いた時も、ふるまいがまるで変わらなかった。あとで『あの時は相当タフだった』と言っていたけど、でも選手たちには『顔を上げて』と同じようなフレーズしか言わなかった。それが、選手に聞いてみても『監督がブレないでいると安心できる』という声が聞こえてくる。どんと構えていて、威厳を持ってチームの真ん中にいて『ラミちゃん』とは呼べない感じです」
――ナインの若さと自身の明るさを融合させ、常に勢いがあって、雰囲気のいいチームを作り上げた。
「ノリをとても大事にしていました。『下を向かない』『頭を上げろ』と前向きに言い続けて。あと、監督の合言葉があったんです。『ムシカ』って」
――「ムシカ」?
「スペイン語で『音楽(musica)』という意味です。試合前にロッカールームでのミーティングが終わると『ガンバリマショウ』の後に『ムシカ!』って。声をかける相手は筒香選手。それを合図に、彼がいつもラテン系のノリのいい曲をかけるんです。難しい話は終わったから後は気分良く試合に入ろう、というのがルーティン。息を合わせて、ずっとやっていた。チームのムードも盛り上がりますよね」
――チームへの影響力では三浦の影響も大きかった。
「人のことを第一に考えて動かれる方でした。もちろん、トレーニングでは自分が優先だけど、それ以外で自分の行動とか発言とかは他人が第一。私がカメラを撮っている時、前を通るタイミングを誰かと一緒に重ならないように一人で出てくれたり、考えてくれていた。試合前は周りが見えなくなるのが普通なのに優しい人だなと。そういう人だから、みんな若い投手は投げた後に『今日の投球どうでした?』って三浦さんに聞くのを、今永選手も石田選手も楽しみにしていました。そういう、ロッカールームでのささいなやりとりも作品には入っています」