侍ジャパンV奪還へ鍵握る中田翔 昨季苦しんだ“弱点”克服できたのか
WBCでは高め、150キロを超えるストレートを攻略できているのか?
それでも、中田はWBCで結果を残している。昨季のようにスピードボールの対応に苦労しているのであれば、本来はレベルの高い投手が集まる国際大会での活躍は難しいはずである。そこで中田の今大会2次ラウンドまでの打席での5安打がどのような球種、速度、コースへの投球を打ったものだったか、また145キロ以上のストレートへの対応を確認した。
まず、スタンドに運んだ球種は、オーストラリア戦はスライダー、中国戦はストレート、オランダ戦はスライダーだった。中国戦ではストレートを本塁打にしたが、133キロの真ん中に来たストレートで、スピードボールに対応したものではない。
ただオランダ戦のタイブレークで放った決勝タイムリーは、ストレートを打ったものだった。昨季苦戦した高め、また遅くはない146キロをやや差し込まれながらもレフト前に運んでいる。
145キロ以上のストレートは16球投じられているが、現在のところ空振りはなく、高めのボール球に釣られて手を出したと見られる場面も少ない。よく見送っているようにも映る。ただ、そもそも150キロ前後のストレートを投じられる場面が少なく、中田が我慢強さや高めのボールを捉える技術を発揮しているとは言えない。
昨季抱えた、速いストレートへの対応という課題が克服できているのかの判断はしかねる。だが、できていないとすると、準決勝以降さらに対戦が増えるであろう速球派投手に苦しむ可能性もある。22日は、侍ジャパンの世界一奪還という挑戦に加えて、中田の速球対応という挑戦にも注目したい。
※DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。
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DELTA●文 text by DELTA