アレックスとマニー 2人の“ラミレス”の運命を分けた日米の野球観の違い

出塁率を重視するメジャー、早打ちを積極性と捉える日本

 それでもアレックスは日本で成功した。NPB史上初の外国人選手2000本安打達成、2度のMVP受賞などの大活躍は記憶に新しい。しかし、打撃スタイルを変えたわけではない。アレックスのNPBでの出塁率は.336、打率は.301だから、IsoDは.035となるが、これは2000本安打を打った47選手の中でも最下位。だが、日本では初球から打ちにいく打者は「積極性がある」と評価される。他の打撃成績が良ければ、出塁率が低くても問題視されないのだ。

 こういった日米の「野球観」の違いが、2人のラミレスの野球人生を大きく変えたと言えるだろう。

 マニーは打者としては高く評価されたが、奔放な性格もあってトラブルメーカーだった。2009年にはドーピング検査で陽性反応を示し、50試合の出場停止処分になっている。2011年を最後にメジャーではプレーしていないが、2014年まで台湾やマイナーリーグでプレー。その後2年は試合出場はなかったが、今年日本の独立リーグにやってきた。

 アレックスは外国人初の2000本安打を記録した後、2014年に引退を発表。独立リーグの指導者を経て2016年から横浜DeNAベイスターズの監督に就任した。人懐こい性格、人望もあり、NPBの野球を吸収し、指導者としても評価を得ている。

 現在、高知ファイティングドッグスに所属するマニーは、独立リーグでプレーしながらNPBへの移籍を希望していると言われる。マニーが好成績を残した時、横浜DeNAのラミレス監督は、かつての「雲の上の存在」をチームに招き入れることを検討するだろうか?

【了】

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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