「異なる言語への変換」だけではない 通訳が得る、人生の財産となる“感覚”
通訳には言語を訳すだけではない、それ以上の仕事が数多く存在する
佐藤通訳の選手と共に戦う仕事ぶりが際立った瞬間だったと語ってくれたのは、北海道日本ハムファイターズのチーム統轄副本部長兼国際グループ長、岩本賢一氏。彼に通訳の仕事について伺った。
「実際にフィールドで繰り広げられていることを、肌で感じながら仕事ができるのは大きいと思います。通訳は黒子でありながらも、多くの会話を見聞きし、組織がどのように形成されているのかを直・間接的に知る機会を得るのは、かけがえのない将来への肥やしとなります」
ファイターズには現在フロント、そして現場に元通訳経験者が7人も所属している。球団代表を務める島田利正氏もそのうちの1人である。そして通訳OBには他球団やMLB球団で活躍し続けている者もいれば、フィールドを変え、米国でパイロットになった者までいる。さらに、現在ファイターズには広報兼任を含むと1、2軍合わせて5人もの通訳が存在する。
岩本氏はプロ野球球団で通訳を経験した人材の強みについて、「通訳として、選手たちの心情に間近に触れた経験は、プロ野球で職責をまっとうする上で、どの部署へ行っても大きな力となります。それが、球団を外から支えてくださっている方々との架け橋にもなりますし、物事を謙虚にとらえ、自身の発想を仕事上、膨らませていく上での根幹にもなりうるといえます」
ある言語から異なる言語へと変換すること=通訳
ヒーローインタビューやマウンドにコーチ・監督と共に姿を現す通訳を観て、大半の人がそう思っているかもしれない。だが通訳には言語を訳すだけではない、それ以上の仕事が数多く存在する。
通訳は常に選手に寄り添い、選手と共に悩み、共に戦う。通訳にしか得ることのできない経験が数え切れないほどある。最近ではファイターズだけでなく、各球団のフロントにも通訳経験者が多数存在するようになった。
実は今回通訳について話をしてくれた岩本賢一氏も2003年から5年間はヒルマン監督の通訳を務めていた。その岩本氏に通訳の経験がどのように現職に生かされているかを語ってもらった。