日本一決定戦を盛り上げるホームラン、2000年代に生まれた記憶に残る一発

ヤクルト山田が長嶋茂雄氏以来の史上2人目1試合3本塁打

【2008年】
◇ラミレス選手(巨人)
第2戦 東京ドーム 2ー2 9回1死走者なし 中越え
対岡本真也氏(埼玉西武)

 狙いすましたようなスイングで、弾き返した打球はフェンスの向こう側へ消えた。外角に投じられたスライダーは簡単なボールではなかったが、一発で仕留める集中力と勝負強さはシーズンMVPの面目躍如だった。ラミレス氏が現役時代に捕手の配球を研究していたことはよく知られた話。お立ち台で、狙いどおりかと問われたラミレス氏の答えは「オフコース」。研究熱心な姿勢と頭脳がパワーと技術を最大化し、当代随一のクラッチヒッターを形成した。「ラミレス」コールに包まれる試合終了後の本拠地で、殊勲者は持ちネタを次々に披露。仲間やファンだけではなく、報道陣まで笑顔に変えてしまう超一流のパフォーマンスだった。

【2009年】
☆阿部慎之助選手(巨人)
第5戦 東京ドーム 2ー2 9回1死走者なし 右中越え
対武田久投手(北海道日本ハム)

 阿部選手が主将に任命されてから、巨人はリーグ3連覇を達成。ところが、就任1年目の2007年は、クライマックスシリーズ第2ステージで3連敗を喫した。翌2008年はリーグ連覇後に右肩を痛めてクライマックスシリーズを欠場、日本シリーズは代打と指名打者での出場となり、またも頂点を見ずして敗退の憂き目に遭っている。心中期して臨んだ2009年の日本一シリーズ第5戦、1点を追う巨人は先頭の亀井義行選手が同点のソロを放つ。中央大学の後輩が試合を振り出しに戻してから1死後、次は阿部選手がサヨナラ弾を放り込んだ。続く第6戦にも勝利して巨人は7年ぶりの日本一に輝き、阿部選手も悔しさを晴らしている。

【2015年】
◇山田哲人選手(東京ヤクルト)
第3戦 神宮 3ー4 5回1死一塁 左越え
対千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)

 山田選手がシーズン中に記録した38本塁打と39二塁打、出塁率.416と長打率.610は、いずれもリーグトップ。異次元の打撃は日本シリーズでも発揮された。東京ヤクルトが敵地で2連敗し、勝手知ったる神宮に戻って迎えた第3戦。山田選手はまず初回に2ランを叩き込むと、同点に追い付かれた後の3回に勝ち越しのソロアーチ、逆転を許した5回には再びリードを奪う2ランを叩き込む。日本シリーズでの3打席連続弾は1970年の長島茂雄氏だけが成し遂げていた快挙(1試合3本は史上初)。プロ野球で13年ぶりに“トリプルスリー”というフレーズを蘇らせた山田選手が、今度は大舞台で「栄光の背番号3」を着けたスターの名前にスポットライトを当てた。

【2016年】
◇西川遥輝選手(北海道日本ハム)
第5戦 札幌ドーム 1ー1 9回 右越え
対中崎翔太投手(広島)

 日本シリーズ史上2人目となるサヨナラ満塁本塁打。当時キャリア5年目で通算22本塁打の西川選手が立つ打席で、誰がこれだけ大それた結末を予想したことか。マウンドの中崎投手が四死球などでピンチを作り、制球に苦しむ中、高めに浮いた速球をしっかりと叩いた。1点奪えば勝ちの場面で3点のお釣りが出る満塁弾が飛び出し、北海道日本ハムは本拠地3連戦全勝を決める。西川選手は前年にも札幌ドームで満塁弾を1本放っていた。今年は満塁機で9打数無安打と苦しんだが、8月17日に本拠地でサヨナラ満塁ホームランを放った。3年連続のグランドスラムで「サヨナラ満塁男」の襲名だろうか。

 決戦で飛び出すホームランは特別だ。日本シリーズに特有の緊張感を切り裂きながら、スタンドインした打球がファンの高揚と歓喜を呼び込む。10月28日に幕を開く今年の日本シリーズにも、そんな光景が多く見られることに期待したい。

(「パ・リーグ インサイト」藤原彬)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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