社会人代表JABAがウィンターリーグに参戦するワケ、その先に見据える目標
平均年齢23.8歳の若手が中心、ドラフト候補の注目選手も参戦
今年から社会人野球の統括団体であるJABA(日本野球連盟)も、アジアウィンター・ベースボールリーグに選抜チームを派遣している。
JABAは今回の派遣について、来年開催される「第18回アジア競技大会(ジャカルタ・パレンバン)における野球競技へ向けた社会人日本代表チームの強化の一環」と位置付けている。ウィンターリーグを通じて、国際大会での代表チームの一体感を醸成するとともに、海外チームとの試合経験を積ませる意味があるのだろう。また、台湾島は12月でも20度を超す温暖な気候で、怪我の心配なくプレーできる環境であることも大きい。
代表チームに選ばれたのは38選手。東京ガスから4人、東芝、三菱日立パワーシステム、日本通運、Honda鈴鹿から各3人が選出された。平均年齢23.8歳の若いチームだ。
ウィンターリーグでは、ここまで大阪桐蔭のエースだった平尾奎太(Honda鈴鹿)、臼井浩(東京ガス)、岡野祐一郎(東芝)が先発。打者では笹川晃平(東京ガス)が満塁本塁打を放つなど好調だ。
29日は台中洲際棒球場で、CPBL(チャイニーズ・タイペイ、プロ野球選抜)と対戦。JABAの先発を務めた吉川峻平(パナソニック)は、関大北陽高校、関西大から今年入社した若手選手だ。昨年は第40回日米大学野球選手権大会の代表として侍ジャパンのユニフォームを着た。183センチの長身で、時速148キロの速球とシンカーが持ち味。今年は社会人ルーキーながら都市対抗で高い奪三振率を記録し、一躍ドラフト候補として注目を集めている。
この日も6奪三振と能力の片りんを見せたが、4本の安打を許した。3回には、CPBLの3番・梁家榮に右翼フェンスを直撃する三塁打を浴びるなど、簡単に安打を運ばれる印象があった。この日の速球は140キロ台前半で、本来の投球ではなかったのかもしれない。
またチームは9安打を打ったが打線がつながらず、盗塁死やけん制死でチャンスを潰すなど、チームとしてのまとまりに欠けていた印象だ。その中でも、1番の佐藤旭(東芝)が、右、左、中と広角に安打を打ち分け、気を吐いた。
CPBLは大振りが目立ったが、それでも少ないチャンスをものにした。一方のJABAは、9回には1点差まで追い上げたが3-4で敗れた。
NPBやCPBLなどプロの選手に比べると、JABAの選手はやや細身でパワーにも欠ける印象だ。また守備力はあったものの、チームの連携は今後熟成されていくと思われた。
JABAにとって勝敗も大切だが、普段と異なる環境で、プロチームなど未知の相手と対戦しながら、チームとしての一体感を高めていくことが最大の目標。全17試合は、選手や指導者にとって良い経験になることだろう。
(広尾晃 / Koh Hiroo)