名打者・篠塚和典氏が語る打撃の極意 イチローも使うバットの秘密、驚異の技術
「篠塚モデル」のバットはイチローも使用、稀代の名打者が語る打撃の“極意”
打者にとって“命”とも言えるバット。こだわりは選手それぞれで違うが、篠塚和典氏とイチロー外野手という日本が生んだ2人の安打製造機のバットが、ほぼ同じモデルであるという事実は興味深い。天才打者は何を考えてバットを選び、打席に入り、ヒットを量産していたのか。巨人で通算1696安打を記録し、2度の首位打者も獲得するなど輝かしい実績を誇る篠塚氏の“思考回路”に迫った。
まず、篠塚氏が使っていたバットはどのようなものだったのか。「細く、ヘッドが効く」。ここにこだわりを持って、作り上げていったという。
「最初に自分のバットにたどり着くまでには多少、時間がかかりました。1980年代に入ってからだから、やはり(プロ入りから)4、5年は経っていたと思います。自分のバッティングにどういうバットが合うのかなというのは、どんな選手でも試行錯誤しながらやっていく。特に自分は(投手が投げる)ボールによって振り幅をだんだん落としていくタイプでした。強く振れるところは、試合でも80%くらい。100%で振るということは、そうはないので。コースや球速によって、そのパーセンテージを落としていくバッティングの仕方なので、それにはある程度、先が使える、動く、そういうバットになってきました。細めで、ヘッドが多少効く、ということですね。
昔はよく、重さを調整するのにバットの先をくり抜いていたんです。僕も最初はそれを使っていたんだけど、どうしても先っぽに当たることもあって、弱いから割れちゃうケースもあったんです。だから、先をまっ平らにして使うようになった。バットの先に当たっても強いし、詰まってるので、ヘッドも重いんだけど、うまく使える。その動きで打球を強く飛ばす。あとはグリップの太さとかも何本か試しながら、このくらいがちょうど自分の感覚で(バットが)出てくるなと。自分の考えとバットが出てくるのが合わないと、なかなか思ったバッティングはできないので」
振り幅のパーセンテージを落とすとは、どういうことか。ここに篠塚氏の打撃技術の高さが集約されている。打席の中での抜群の対応力に、球史に名を残すアベレージヒッターの凄みがあるのだ。