筒香嘉智が勇気を振り絞った12分間スピーチ 球界の現状に違和感と危機感

金属バットの使用による弊害も

「骨格がしっかり固まり、体が出来上がっているプロ野球選手たちがリーグ戦を戦っているのに、まだ骨格がしっかり固まらず、体が出来上がっていない子供たちがトーナメントで戦っているのが現状。トーナメントはミスができない戦いがかなり続きます。試合に出ている子供たちは日程が詰まる中で何試合も連続で出て、体に負担が掛かるし、試合に出てない子供たちは面白くないし、いろいろな経験を積むことができない。そういう弊害があると思います」

 勝利にこだわったチームを作るために、練習時間が長くなる。子供が朝から夕方まで集中力を保ち続けられるわけはないし、体に負担がかかり、怪我をする確率が高まる。また、野球を始めたばかりの小さな子供たちに「勝たなければいけない」「こうやって打て」「こうやって投げろ」といった“指示”を投げかける指導者も増える。ミスを怒られれば、怒られないようなプレーに終始し、そこから創造力は生まれない。そういう状況を見た筒香は「子供たちが大人の顔色を見てプレーしている。野球は楽しいのに、子供たちが楽しそうに野球をやっていないっていう光景がすごく多いと思います」と表情を曇らせた。

 子供の将来を考えた場合、金属バットの使用も大きな弊害だと感じているようだ。日本では、高校まで金属バットが使用され、年々その精度が上がって打球が飛ぶようになっている。実は、アメリカでは大学生まで金属バットを使っているが、反発係数を抑制し、より木製バットに近い打感になっている。筒香も実際に使用して「僕もそのバットで実際に打たせてもらったんですけど、木製バットにより近いくらい飛ばないもの。しっかりボールを引きつけて強いスイングをしないと飛ばないものになっています」と実感。その上で「日本のバットは、去年甲子園のホームラン記録が塗り替えられましたけど、圧倒的にバットのおかげで飛んでいる打球も目にする。これは子供たちのためにはなっていない。僕も木製バットになれてちゃんと使い込むまでに時間がかかりました」と異議を唱えた。

 12分間のスピーチと、それに続く質疑応答の中で、筒香は何度も「勇気を持って」という言葉を繰り返した。現役選手が野球界の現状に違和感や危機感を唱えることは少ない。前例がほぼないことだけに、物議を醸すかもしれないし、反発を呼ぶかもしれない。だが、それ以上に「ただ野球人口を増やしたいとか、野球界のためにっていうのではなくて、本当に将来の、未来の野球界のことを考えたり、自分よりも将来の子供たちのことを考えることの方が大事なのではないかと僕は思う」と言い切る。そこに「勇気を持って」働き掛けることの意義を見出した。

「チーム・アグレシーボ」は、筒香の思いを具体的に世に伝えるために踏み出した第一歩。これを足掛かりに、今後もアグレシーボ(積極的)に各方面へ働きかけを続けていく。

【動画】“スーパーバイザー” 筒香嘉智が積極的な少年野球改革! 打撃の披露も

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