楽天先発陣の躍進の裏側 「ゆとりのある投手運用」に迫る
シーズン通しての活躍のため前半戦に球数を管理
岸の最も大きな変化は奪三振の増加だ。昨季の189奪三振はキャリア最高の数字で、対戦打者あたりの割合で見ても2014年から20.0%→21.0%→19.2%→26.9%と上昇している。
またもう1つ注目したいのが投球回の増加だ。近年の岸は故障によりチームを離脱することが多く、2014年からの登板数は23→16→19と1年間ローテーションを守ることができていなかった。昨季は登板数を26試合に増やし、160回1/3→110回1/3→130回1/3と推移してきた投球回を176回1/3にまで伸ばした。奪三振と投球回の増加。投球の質と量の両面で向上を見せたのだ。
この成績向上の要因となっていそうなのが球数の問題だ。2014年からの3年間で見ると、岸はいずれの年も1試合の球数が140球を超える試合があったが、昨季は1度もなかった。球数のデータを見ると楽天が特に前半戦、岸の球数を管理しようとした形跡が見える。
2つ目の図は1試合にどれだけの球数を投げたかを、開幕からの登板ごとに記録していったものだ。横軸が右に進むごとに登板を重ねていると見てほしい。昨季前半戦の岸は6月11日の広島戦(9試合目の登板)で129球を投げた以外は毎試合115球前後と安定した球数となっている。ほかの年のグラフと比べると上下動が少なく、球数が多い試合が少なくなっているのがわかるだろう。特に昨季は開幕直前に体調を崩し少し遅れてシーズンをスタートさせたこともあって、首脳陣が慎重に起用しようとしたのかもしれない。
2015年には故障からの復帰3戦目で146球、2016年も復帰2戦目で140球を投げていたことからも西武と楽天の運用に対する意識の違いが見える。安定した球数で登板を続けたこともローテーションを守り続けられた1つの要因といえそうだ。