“大谷を裸にする男” データの達人「スタットキャスト」アドラー氏を直撃
データは野球を語る新しい言語のようなもの
――スタットキャストの将来はどのようになると思いますか?
「野球にとって、とても重要になってくると信じています。考え方としては、野球を語る新しい言語のようなものです。何もなかったところに生まれたわけではなく、そこにあったものに対して新しい価値を生み出して、表現方法が増えたというイメージです。
チームにとっても、ファンにとっても重要な要素です。ヤンキースはイニング間の休憩中にファンにクイズが出題されています。例えば、『ヤンキースで一番強い打球打った選手は?』という質問が出て、答えはジャッジ、スタントン、サンチェスの3者択一。正解として『スタントンが打った、いついつのホームランだ』という風に出ます。テレビでも同じような形でデータの露出が増えている。より多くのファンに楽しんでもらいたいと思います」
――野球の進化にスタットキャストも大きな影響を与えています。
「私は今関わっている仕事が大好きです。これからもツイッターでデータを共有したり、記事を書いたり、他の記者と共有したりしたいと思っています。僕が興味深いと思うことを他の人も興味深いと思ってくれることがうれしいのです。
今の取り組んでいるのは、ファンが欲しい情報を提供すること。例えば、アレナドがいい三塁手だということは全員わかるけど、どの点で優れているかというところを数値で提示し、伝えることができます。大谷のスライダーがどれだけ動きがあって、スプリットがどれだけ落ちるかなど、今はボールの動きにも力を入れています。データが増えればよりすごさも理解できると思うので、これからも楽しく有益な情報を提供し続けたいと思っています」
――統計学的に野球を数値化するセイバーメトリクスとスタットキャストの違いは?
「セイバーメトリクスよりも、もっと単純な数値を提示しています。実際に起きていることですね。大谷のスプリットが44球中1本しかヒットになっていない事実を、スプリットの動きを数値化すれば説明できます。トラウトが打つホームランは打球速度が116.8マイル(約188キロ)ですが、これは何の公式も利用していないし、新しい要素ではないけれども、分かりやすい。分かりやすく、興味があることを追求しています。それがファンも求めていることでもあると考えています」
――最後に、自分を一言で表現してください。
「そうですね……。『理論的』かな。それが自分が好きなことだし、していきたいことですね!(笑)」
(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)