ロッテ井上の急成長を支える“引きつける打撃” ロッテ打線にも同じ傾向?

引っぱり方向に飛びやすい低めもセンターや逆方向に

 ただ、ここまでのデータでは低めに手は出してはいないものの、実際に引きつけて打っているかどうかはわからない。そこで打球方向を見てみたい。引きつけて打つことができているならば引っぱり方向に打球が飛ばず、センターや逆方向に飛ぶはずだ。

 先ほどスイング率を見る際に使った投球の高さ別に、今度は打球が引っぱり方向に飛んだ割合を見てみよう。NPB平均は高めから31.5%、34.8%、36.6%。投球が低めに向かうほどに引っぱり方向に打球が飛ぶ割合は上昇するようだ。それに対してロッテ打線は高めの引っぱり割合が30.1%とNPB平均並であるのにもかかわらず、真ん中、低めと投球が低くなっても引っぱり割合に大きな変化が見られない。低いボールに対しても引きつけてスイングしている様子がうかがえる。

高低別引っぱり割合【画像提供:DELTA】
高低別引っぱり割合【画像提供:DELTA】

 井上はどの高さに対しても引っぱる割合が変わらないということはないが、やはりNPB平均より引っぱりが少ない。こうした引きつけてスイングをする姿勢が選球眼向上に一役買っているのだろう。前述の通り、井上の選球眼の向上は長打の増加にもつながっていると思われる。センターから逆方向に強い打球を打てる井上に、引きつけるバッティングが上手くマッチした形と言えるだろう。

 昨季のロッテはシーズン序盤のチーム打率が2割を下回るなど極端な得点力不足のシーズンを送った。長打力に欠けるチームにもかかわらず、出塁率もリーグ最下位の.297と低迷したため得点が増えないのも当然の状況だった。しかし今季は選球眼が向上し、出塁率はパ・リーグ2位の.332まで上昇。得点力不足を解消した。今後、井上のほかに長打力のある打者をラインナップに加えられれば、さらに得点力は増加しそうだ。(データはすべて8月13日終了時点)

(DELTA・八代久通)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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