元阪神・藪氏が見る準決勝 大阪桐蔭と済美の勝敗を分けたのは「バントの差」
7回以降に制球を乱した済美・山口直「僕は正直怖かったです」
第100回全国高等学校野球選手権記念大会は21日、準決勝が行われ、第2試合は大阪桐蔭(北大阪)が5-2で済美(愛媛)を下した。1点先制したのは済美だったが、4回に大阪桐蔭は山田健太の左前タイムリーなどで2点を挙げて逆転。直後に同点に追いつかれたが、5回2死満塁から石川の中前2点タイムリーなどで3点を加えて突き放した。
史上初2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭は、背番号1の柿木蓮が先発。対する済美は、愛媛大会から1人で投げ続けてきた同じく背番号1の山口直哉がマウンドに上がった。両投手が好投し、序盤は勝負はどちらに転んでもおかしくない展開に見えた。元阪神でメジャー右腕の藪恵壹氏も「両チームの差は、ほぼないように見えましたね。プレーしている選手も、そう感じているように見えました」と振り返る。では、どこで勝敗の差がついたのか。それは「バントの差だと思います」と言う。
「2回に済美が1点先制した直後です。なおも無死一、二塁という場面で、7番の山田君に送らせなかった。スコアブックにも、思わず『バントしない?』と書き込んでしまいましたが、序盤だからということもあり、打たせていったんでしょうか。もちろん、形にこだわった野球をする必要はありません。ただ、投手心理を考えると、先制された直後に三塁に走者を置くのはとてもプレッシャーが掛かる。政吉君のヒットはセンターの藤原君が好返球で刺しましたが、2点目が入っていたら流れは変わっていたかもしれません。
逆に大阪桐蔭は、4回無死一、二塁から6番の石川君が送りバント決めて逆転につなげ、5回無死一、二塁でも3番の中川君が送ってきた。失敗こそしましたが、相手に対するプレッシャーの掛け方が上手いですよね。そういった小さなプレーの差が出たような気がします」
投球の専門家という視点から見た場合、実は7回以降の済美・山口直のピッチングは「ヒヤヒヤしながら見ていました」と明かす。
「山口君はスライダーとチェンジアップを上手く使いながら、いいピッチングをしていました。5回にはバックドアのスライダーで4番の藤原君を見逃し三振に仕留めた。素晴らしかったと思います。ただ、6回で114球を投げたあたりから、少し肩の調子がよくなかったんじゃないかと思います。7回には肩を回す仕草を見せていましたし、明らかに制球にばらつきが出た。こうなると怪我のリスクが頭をよぎりますよね。僕は正直怖かったです。監督は最後まで投げさせてあげたかったのかもしれませんが、ヒヤヒヤしながら見ていました」