世界の福本も認めた“甲斐キャノン” 名球会の俊足選手たちが語る盗塁成功のカギ
通算579盗塁の柴田勲氏「諦めて走るか、最初から無理しないだろうね」
先日の日本シリーズで6連続盗塁阻止の日本記録を達成。まさに「時の人」となったソフトバンク甲斐との対戦について、足のスペシャリストたちに聞いてみた。
甲斐は10年育成ドラフト6位でプロ入り。103試合出場を果たした17年に、育成出身初となるゴールデングラブ賞とベストナイン賞を受賞。18年はリーグトップの盗塁阻止率.447で2年連続ゴールデングラブ賞、加えて日本シリーズMVPも獲得した。今や球界を代表する捕手となり、「最も盗塁が成功しづらい捕手」と言える。
「まぁ、普通にやったら間違いなく刺されるよね。セーフになるイメージが全く湧かない、それだけのすごい捕手だと思うよ。キャッチングからスローイングまで隙がないからね。正直、諦めて走るか、最初から無理しないだろうね」
巨人V9時代不動のリードオフマン。通算579盗塁で盗塁王を6回獲得した柴田勲氏は、諦めの言葉からスタートした。
「もちろん盗塁を全て刺す捕手というのはいない。送球が少し逸れたり、野手がファンブルしてしまうこともある。それにしても、成績だけ見れば2回に1回は刺す。これは長いプロ野球を見渡してもスゴイことだと思う。ソフトバンクは一般的にクイックがうまくない、と言われる外国人投手もいるわけだから。それだけスゴイ捕手だと思う。やっぱりそういう偶然性を頼みに、刺されること覚悟で走るしかないよね」
続いて語ってくれたのは福本豊氏。通算盗塁数1065個の日本記録を持ち、盗塁王13回。阪急一筋20年で通算2543安打、ゴールデングラブ賞12回など、まさに走攻守全てで優れた名選手だ。
「かつては各球団に1人は名捕手がいた。それが少なくなっている中で、久しぶりに出てきた素晴らしい捕手だね。肩の強さももちろんだけど、どんな体勢で捕球しても正確なスローイングができる。日本シリーズも6回刺したうちの5回は完璧に近い送球だったもんな。あれでは無理やわな」
福本氏は現役時代から投手のクセを研究することに定評があった。甲斐と勝負する場合にも、セーフになる鍵は投手にあると言う。
「ワシやったら最初から投手と勝負するね。甲斐と勝負しても勝てる確率は低い。徹底的に投手の投球モーションを研究して、クセを探って、それを盗んで走る。特にソフトバンクは外国人投手も多いから、クセは見つけやすいはず。それを徹底すれば、全てではないにしても、必ず何回かに1回は盗塁成功できる」
球史に残る俊足選手、柴田、福本両氏からも、甲斐の強肩、送球技術はずば抜けているとお墨付きを得た。だが、勝負となると話は別。盗塁成功させるためのノウハウを持っているのは、経験が為せる業か。