【肘と野球】小学生から球数制限を――肘の専門家と考える高校球児の怪我のルーツ

古島医師が見守ってきた夢を諦めた子供たち

 群馬県館林市にある慶友整形外科病院には、小学生からプロまで数多くの野球選手が診療に訪れる。名誉院長を務める伊藤恵康医師は、日本屈指のトミー・ジョン手術(肘靱帯修復手術)の執刀医。その一番弟子で整形外科部長を務める古島弘三医師は、これまで故障が原因でプロ野球選手になりたいという夢を諦め、涙を流す子供たちを数多く目にしてきた。

「あまり知られていないことかもしれませんが、高校生になって発症する肩肘の故障は、根本をたどると小学生や中学生で負った怪我が治りきっていなかったり、過度にかかった負荷が原因だったりすることがあります。つまり、小学生や中学生の時に、適切な指導の下で正しいトレーニングや怪我の対処が行われていれば、防げた怪我もある。

 今、高校生で球数制限を導入しようという動きがありますが、本来ならば小中学生のうちから球数制限を設けるべきでしょう。そして、球数制限をなぜ取り入れるべきなのか。『子供の怪我を防ぐため』『将来大きな選手に羽ばたくため』といった漠然として理由は分かっていても、子供の体に過度な負荷がかかるのはなぜ良くないのか、症状を放っておけばどのような怪我や障害につながるのか、具体的な理由が分かっていない人は多いと思います」

 小中学生の体はまだ成長段階にあり、一般に大人の骨としてできあがるのは15歳前後だという。成長を続ける未熟な骨や筋肉に過度の負荷をかけ、十分な休息を与えなければ、怪我を引き起こすだけではなく、時には成長の妨げとなることは容易に想像できるはずだ。

小中学生でのレギュラー獲り、将来の成長、どちらが大事?

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