【あの夏の記憶】“金農旋風”から1年 サヨナラ2ランスクイズの当事者が語る舞台裏「決めちゃえ」

八戸学院大に進学した金足農OBの菊地彪吾【写真:高橋昌江】
八戸学院大に進学した金足農OBの菊地彪吾【写真:高橋昌江】

昨夏の甲子園で準優勝した八戸学院大・菊池彪吾が“金農旋風”を語る

 昨夏の甲子園で決勝に進出した金足農(秋田)。準々決勝の滋賀・近江戦は1-2の9回裏に2ランスクイズで劇的なサヨナラ勝ちを収めた。二塁からサヨナラのホームをタッチした菊地彪吾(ひゅうご)は八戸学院大に進学。「高校時代にできなかった全国優勝をしたい」と次の夢に向かっている。

「あの時は本当に現実なのか、という感じ。夢みたいな感じでした。甲子園にいる時も何が何だか分からないというか。試合の時はもちろん、集中しているのですが、試合が終わって球場を出る時の甲子園のファンの方たちの反応がすごくて、現実なのかなと思っていました」

 菊地彪吾は1年前の夏をそう振り返る。

 甲子園に11年ぶりの出場だった秋田の古豪・金足農。1回戦で鹿児島実(鹿児島)、2回戦で大垣日大(岐阜)と甲子園常連校を下し、3回戦では高橋佑輔が高校初本塁打となる逆転3ランを放って優勝候補に挙げられていた横浜(神奈川)を撃破。準々決勝では近江(滋賀)にサヨナラ2ランスクイズで勝利した。準決勝では2-1で日大三(西東京)に競り勝ち、県勢103年ぶり、金足農としては初の決勝に進出。大阪桐蔭(大阪)との頂上決戦こそ2-13と大敗を喫したが、世間に大きなインパクトを与えた。

 秋田の公立校、それも農業高校が地元の選手だけで強豪校を連破していく。それもエース・吉田輝星(現日本ハム)を中心にレギュラー9人で戦い抜き、バントやスクイズを駆使して手堅く得点を取りにいくスタイル。スポーツニュースのみならず、ワイドショーまで賑わった。

 地元の秋田の熱狂は甲子園の比ではなかった。「決勝が終わってテレビを見たら人がいっぱいいて、『これはヤバいな、秋田に帰ったらどうなるんだろう』と思いました」と菊地彪。案の定、秋田空港に凱旋すると約1400人の出迎えが待っていた。混乱を避けるため、2か月ほどは電車通学が禁止となり、文化祭では一般公開が中止になった。

「この前、秋田に帰った時も声をかけられました。キャリーバッグを持って秋田駅を歩いていたら。髪が伸びたから分からないかなと思ったんですけど、分かるんだ、と思いましたね」

サヨナラ2ランスクイズで準決勝進出「次の塁を狙う姿勢を教えてもらった。それが生きた」

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