社会人野球は「俺の原点」 元中日監督・落合氏、都市対抗決勝でストライク始球式
大船渡・佐々木の決勝敗退には「議論にしてはいけない」「騒ぐ人は責任のない人」
元中日の監督、GMなどを務めた落合博満氏が25日、第90回都市対抗野球の決勝戦で始球式を行った。東芝府中時代を再現したユニホームを着用し、「生まれて初めて」という記念のピッチ。名前がコールされると、帽子をとってファンへ挨拶。場内は大歓声に包まれた。注目の一球は見事、ノーバウンド投球。「届いてよかったです。まさか90回の記念の大会で始球式をやるとは思っていなかったです。感謝の言葉だけです」と感慨深い様子だった。
落合氏は東芝府中(府中市)に1974~78年に在籍し、都市対抗に補強を含めて3回出場。一度、大学で野球を辞めたが、東芝府中に入社し、野球を再び始め、76年に都市対抗初出場を果たした。そこからプロへ道がつながった。「一回、野球を辞めた人間がこの都市対抗に出た。これがなかったら、ここにもいないし、野球をやっていなかったかもしれない。そういう意味では(自分の)原点。そこから扉が開いて、今、現在に至っている」と熱い思いを語った。
NPB球団を退団した選手が社会人で再びプレーする姿も珍しくない。落合氏は「(社会人は)プロの受け皿ではないんです。野球を未来永劫、続けていく役割がある。ここをステップにして、プロへ入るとか考えない方がいいと思う」。歴史あるこの大舞台を、ステップアップの場としてとらえてほしくはない。
ただ、一方で「プロでダメになった人がトライアウトでまた野球の道を続けられるというのが、逆に言えば社会人の良さというのでもある。10人、20人と増えていくようになればいい。また、昔みたいに社会人に戻ってきてプロに行くという選手がいるから、夢があっていいじゃないですか」と社会人野球が盛り上がっていくことにも期待した。今年も、観客席でビールを飲みながら「唯一の楽しみ」と、都市対抗野球を3、4試合観戦したという。影ながら社会人野球を応援している。
また、プロ注目、大船渡の佐々木朗希投手が投げずに岩手県大会決勝戦で敗退したことには「周りがとやかく言う問題ではない。そこで指揮を執っている監督の最善策。騒ぐ人は責任のない人。議論にしてはいけないんです」と話した。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)