野球人口の減少に歯止めをかけるには? 求められる野球界全体での取り組み
高校球児が取り組む就学前児童や小学校低学年向けの「野球教室」では成果も
その原因は1つではない。少子化が基底にあるのは間違いないところだが、年に1万人近い減少はこれだけでは説明できない。少子化に加えて、地上波での野球中継の減少、空き地や公園でのボール遊びの禁止、他スポーツの選択肢の増加、丸坊主や厳しい指導などへの敬遠、用具代などの費用の高騰、などが背景にあると考えられる。これらが複合的に絡み合って野球競技人口の減少につながったといえるだろう。
「野球離れ」が深刻化する中で2018年に日本高野連は、「高校野球200年構想」を発表。就学前児童や小中学生向けの野球事業にも取り組むこととし、野球未経験者にアプローチする「普及」、野球経験者に競技を継続してもらう「振興」、故障によって競技を離れる人を減らす「けが予防」、指導者や選手の技術向上を目指す「育成」、目標を達成するための「基盤作り」を5大目標に掲げた。
これによって高校球児が未就学児童や小学校低学年の子供に「野球教室」をすることが可能になった。日本各地で行われている高校野球部による幼稚園や小学校低学年への「野球教室」は、高校側にはそれなりに手応えを感じるイベントになっているようだ。
青森県弘前市の弘前聖愛高は2017年から球児たちが主体となって保育園、幼稚園などで「野球教室」を主催。翌2018年には弘前市内の少年野球人口が28%も増加した。この報告を受けて、2019年からは青森県高野連が普及活動に取り組んでいる。
昨年12月に東京都の新宿高で行われた東京都高野連公認の「ティーボール教室」でも、高校生たちの指導のもと、子供たちが嬉々として野球遊びに興じた。子供、保護者の満足度は非常に高かった。これまで高校球界は、こうした普及活動には取り組んでこなかった。それだけに関係者は「やればやっただけのことはある」と手応えを感じている。
しかし、そうして「野球好き」になった子供が高校で野球を始めるのは10年先のことになる。それまでの期間、高校野球競技人口が低迷することは避けられない。高校野球だけでなく、日本野球界はいろんな意味で「長期展望」をもって普及活動に取り組むべき時代を迎えている。
(広尾晃 / Koh Hiroo)