解雇選手の嘆き「感染したくなかった」 コロナ禍でも観客を入れて開催のニカラグア野球の現状
選手の激白に地元メディアは「正しい判断」と決断を尊重
社会主義色の強い独裁政権下のニカラグアでは、18年に社会保障制度改革を発端とし、オルテガ政権に反対する学生らが軍や警察から弾圧を受け、数百人が命を失ったと言われている。そして当時、発表された死者の数は政府と現地の調査団体で大きく異なった。今回のコロナ禍でも同じ現象が起きており、感染者数13人、死者3人(26日現在)という数字に対し、地元の市民団体は24日の時点で国内の感染者数は316人、死者は44人と発表している。ちなみに、隣国のコスタリカでは26日現在、感染者数697人、死者6人、ホンジュラスでは感染者数702人、死者64人だ(いずれも政府発表)。地元紙「ラ・プレンサ」によると、今回のコロナ禍を受け、選手たちからリーグに対し、会議を開き、直ちに試合を中止するよう求める声も出たというが、試合は継続されている。
ニカラグアに住むある野球ファンの男性は言う。「今、国内は、公立の学校はやっているが、私立の学校は閉まっている状態。マスクの値段も非常に高い。セマナサンタ(聖週間)の時も、政府は各地の祭りなどのイベントに積極的に参加するように促していたが、国民は感染を恐れて外出を自粛した。国内を旅行する人も減ったし、野球を見に行く人も去年よりも減っている。自分も感染したくないから、今年はまだ球場には行っていない。そして野球は各チームのトップが政府の人間なので、選手たちは新型コロナウイルスのことに関しては(制裁を受けないように)気をつけて話さないといけない状況に置かれている」。
今回、セレドンの出場停止処分について第1報を報じた地元メディア「アクシオン・デポルティーバ・ヒノテガ」のSNSには「選手が健康でなければ野球の試合は成り立たない」、「正しい決断。リーグは直ちに中断しなければならない」、「選手全員が彼と同じ決断をすべきだ」など、彼の決断を支持するファンのコメントが多く寄せられた。一方で「野球をすることが彼らの仕事だ。職場を放棄すべきではない」という意見もあった。それと同時に「誰もが感染を気にすることなく、普通に野球が楽しめる日が来ることを願っている」という書き込みもあった。
同リーグでは土日は各1試合のテレビ中継があり、SNS上でもライブ配信されており、自宅で画面を通じて野球を観戦しているファンもいる。7試合制のプレーオフ・ファイナルが終わるのは8月5日。コロナ禍における試合の通常開催について、ニカラグア国内でも受け止め方は様々だが、この先も約3か月に渡り、リーグの試合は続いていく。
(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)