来春閉校の“最後の世代”が挑む夏 北海道・江陵が目指す頂点と人としての在り方

横浜から野球留学した尾崎主将「この高校を選んで正解だった」

 指揮官の誠心誠意の言葉を聞いた選手たちは、涙をグッとこらえてうなずいた。横浜から野球留学してきた尾崎太郎主将(3年)は「ミーティングの話を聞いて、この高校を選んで正解だったと思いました。この経験をどう生かすかで人生が変わる。前を向いて強く生きたいです」と気丈に語った。

 PL学園中出身で「球道即人道」を指導理念に掲げる谷本監督との出会いで人生の考え方が180度変わったという。「入学前は技術だけでいいやと思っていましたが、人間性や感謝することの大切さを教わりました。監督さんを甲子園に連れて行って男にするという気持ちは変わらないです。みんなものすごい縁で集まった仲間。死ぬまで一生大事にしたいし、大会があれば、監督さんと仲間を信じて、教わった谷本野球を全力でやりたいと思います」と尾崎主将は前を向く。

 監督を甲子園に連れて行って男にする――。実は5日に1軍デビューを飾ったソフトバンクの古谷も高校時代、このフレーズを何度も口にしていた。ミーティングで谷本監督はその古谷の話題も持ち出した。プロ入り後に血行障害で苦しんだこと、結婚して勝負の年を迎えたもののコロナ禍で開幕できずに焦っていることに触れた。

「昨日古谷に電話をしたら『自分は江陵で学んだことを信じて頑張るから、後輩たちにも頑張ってくれと伝えてください』と言っていた。つらいのはお前たちだけじゃない。捉え方だよ。この経験は絶対に生きる」と、20人の選手に静かに訴えた。

 間接的に届いた古谷のメッセージはナインに勇気を与えた。左腕エースの永島翼投手(3年)は「目標にしている方。けがをして這い上がってきているので、自分たちもこんなところで下を向いていられない。全員で勝利を届けたいです」と意気上がる。

谷本監督の教え「ほかの学校の3年生も最後に変わりないよ」

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