創部57年目の東海大に初の女性主務 名将が惚れ込んだ「き・め・ごころ」

大学のマネージャーでしか体験できない喜び、性別は関係ない

 楽しいキャンパスライフ、アルバイトして好きなものを買う、お洒落をして街を歩く…そんな大学生に憧れた時期もあったが「野球とつながっていたいな、と。野球で出会った人、同級生が大学、社会人で野球を続けるのを同じ目線で見届けたいなと思いましたし、同級生の活躍が自分の喜びになりました」

 自分がプレーできるわけではないが、自分以外の誰かの為に一緒の時間を過ごし、尽くし、得られる喜びの味を知った。他のリーグや社会人野球で高校の先輩や同期がボールを追いかけている姿に背中を押された。「アルバイトでは働けば、お金がもらえますが、大学はお金が出ません。でも、ここでしか得られないものがあります」。人のために動くことが何よりも喜びに変わっていた。

 男性主務との違いを感じることもある。男子寮のため、女性主務、マネージャーは寮に泊まることができないため、自転車で15~20分の距離のところに住む。そのため、急を要することへの対応が遅れる。また野球経験者が多い男子マネよりも野球の知識が浅いため、深い話ができないことに悔しさを覚えたりもする。

 それでもくじけることはない。自分にしかできないことで力を発揮すればいいからだ。

「女性だから気付くことだってあると思うんです。例えば、掃除にしても細かいところが見れるんじゃないかなとも思います。女性が有利なところもあると思います」

 9月19日、東海大が所属する首都大学リーグも春の中止を乗り越えて、いよいよ開幕する。他にも日体大や筑波大などにもNPB12球団のスカウトが注目する選手や甲子園を沸かせた選手たちが多く在籍する。東海大から誕生した初の女性主務が全国の頂点を目指す戦いが始まる。誰も見たことがない景色を見て、同じような志を持つ女性が増えていけば、またその魅力は広がっていく。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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