日ハム中田、セイバーメトリクスに表れない凄さ ラストスパートで2冠も視界に

難しいボールであっても、きっちり外野まで運んでみせるプロの技

 最後に、中田の特徴の一つともいえる犠飛について、その内訳をより詳細に見ていきたい。今季記録した9本の犠飛のうち、ど真ん中の絶好球を打って記録したものは1本のみ。9本のうち3本がボールコースの球を打って記録したものとなっており、厳しいコースの球であっても、きっちり外野まで運ぶことができる技術の高さを示している。

 ボール球を打って記録した3本の犠飛の内訳を見ていくと、リック・バンデンハーク投手が投じた低めのボールゾーンに落ちるカーブ、同じく低めのボールとなる美馬学投手の決め球・フォーク、今井達也投手が高めのボールゾーンに投じた154km/hの速球といった、通常であれば当てるのが難しい球ばかりであった。そういった球であってもきっちりと外野まで運んでしまう中田の技術には、ただただ驚かされるばかりだ。

 また、今季の犠飛の中にはカーブを打って記録したものが2本あり、苦手の球種であっても犠飛のシチュエーションでは捉えることができている。

 先ほど述べた通り、チャンスで確実に打点を稼ぐ能力や、「最低でも犠飛」という状況できっちりと外野の深い位置まで打球を飛ばす能力といった中田の長所は、セイバーメトリクスの観点からは評価の対象外とされているのが実情だ。しかし、ここまで紹介してきた数字や、今季の好調ぶりを示す各種の成績を見る限り、中田のチームに対する貢献度の高さは、もはや疑いようのないところだろう。

 中田は2018年オフ、このシーズンに取得したFA権を行使せず、ファイターズに残留することを選択。若手の多い現在のチームにとっても、長年にわたって主砲としてチームを引っ張ってきた中田の存在は、精神的支柱としても大きなものとなっている。こうしたリーダーとしての貢献度というものも、当然ながらデータでは計ることのできないものだ。

 新陳代謝の活発なチームにあって、約10年間にわたってレギュラーを貼り続けている中田。その継続性の高さと“勝負強さ”という無形の価値は、これからもファイターズに多くの得点と、かけがえのない白星をもたらし続けてくれることだろう。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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