西武スパンジェンバーグが見せる適応能力 MLBプロスペクトが日本で開花の予感
ボール球であっても安打にしてしまう、器用さを兼ね備えたバッティング
次に、スパンジェンバーグが今季記録しているコース別の打率について見ていこう。(成績は2020円10月19日時点)。
ストライクゾーンでは内外角高め以外のコースで打率.250以上の数字を記録。真ん中のコースであれば高めで打率.500超え、低めでも打率.474と優れた数字を記録している。また、インコースのボールゾーンの球に対しても3割超えと、ストライクゾーンから外れる球であっても捉えることができる器用さも持ち合わせる。さらには、身体から遠く離れたアウトコース真ん中のボール球に対して打率.500という驚異的な数字を記録しており、隣接するストライクゾーンの球へも打率.342。外の球への強さを見るに、腕の長さを効果的にバッティングに活かしているようだ。
課題としては、総じて得意なアウトコースの中で、例外的に打率.229と苦しんでいる外角高めの球への対応と、ど真ん中の甘い球に対して打率.261とミスショットが見受けられる点だろうか。どちらも他のコースに対して残した数字からうかがえる、スパンジェンバーグの資質からいっても改善される可能性のある部分なだけに、今後のさらなる適応に期待したいところだ。
コース別の数字に続いて、球種ごとの打率についても見ていきたい。
まず4打席2安打1四球のシュート。9月9日の試合では左腕の田嶋大樹投手が投じたインコースのシュートを引っ張って特大の本塁打にしており、スパンジェンバーグにとっては得意な球種と見てよさそうだ。
スライダーに対しては打率.278を記録。7月31日には左キラーとして知られる嘉弥真新也投手が投じた、低めのボールコースに落ちるスライダーを拾って本塁打にする離れ業を披露しており、左投手の外に逃げるスライダーを安打にする機会も少なくない。往々にして来日初年度の助っ人が苦しみがちな配球へ対応できているという点も、日本球界に適応しつつあることの証明と言えるか。
その一方で、フォークやカーブといった球種に対する打率はやや低くなっており、低めの球を引っ掛けて凡打に終わるケースが散見される。とはいえ、低めの球に食らいついて一二塁間を破ったり、あるいは追っつけて逆方向に運ぶ安打も見受けられるだけに、そういったしぶとい打撃がより増えてくれば、さらなる確実性の向上も見込めるかもしれない。
最後に、スパンジェンバーグが今季記録してきた安打の方向についても見ていきたい。安打になった打球のコースとその安打数は、下記の通りとなっている。
最も多いのが右翼への打球とプルヒッターの傾向こそあるものの、中堅方向や逆方向への打球も一定数あり、左中間への安打も8本存在。これらの数字からも、完全な引っ張り専門ではないことがうかがえる。また、投手と一塁への安打もそれぞれ2本存在するなど、合計6本の内野安打も記録。このあたりにも、スパンジェンバーグの足の速さが表れているといえよう。
また、本塁打の着弾点としてはライトスタンドが8本、レフトスタンドが3本と、引っ張りだけではなく逆方向へも伸びる打球を飛ばせるところが特色だ。その一方で、センター方向への安打は19本記録しているものの、バックスクリーン方向への本塁打は1本となっている。