DeNAバッテリーが振り返る「会心の1球」 守護神・三嶋がレベルアップを感じた球
吉川尚を3球三振「あそこに決めないと見逃し三振はないと思いました」
ファウルになった2球目の高めストレートを見て、決め球は膝元ギリギリに決まるストレートだと決心。「戸柱も同じ考えでした」と三嶋は頷く。
「多分、普段だったらバッターは振りにくるコースだったと思ったんですけど、そこで前のバッターの打ち取られ方を見て、フォークの意識を持っている吉川選手の裏をかけたのかなと思います。あそこは狙い通り、3球三振を取れた。戸柱と本当に同じ意識、考えを持って、意思疎通できた1球だったと思います」
1点リードの9回2死三塁、カウント0-2から三嶋が投じた膝元いっぱいに決まる153キロのストレートに、吉川は微動だにすることができなかった。「本当にすごくバットコントロールがいい選手。対戦成績はいい方だとは思っていない」という打者に対する、まさに「会心の1球」だった。
「2ストライクに追い込んだ瞬間、あそこ(膝元)に決めないと見逃し三振はないと思いました。空振り三振はあるかもしれないけど、バットに当てられると何かが起こる。だから、あそこは絶対に見逃し三振を取るという思いを込めたボールを投げました」
強い思いを込めた1球がズバリと決まって、試合終了。その瞬間、マウンド上の三嶋は両腕を天に突き上げるガッツポーズを見せた。「あまり品のない、相手に失礼なガッツポーズだったなって反省しました」と苦笑いするが、普段はポーカーフェイスを崩さない守護神が、思わず感情をむき出しにした瞬間でもあった。
「抑えたことはもちろん、しっかり配球できたことが自分の中ですごくうれしくて。力だけではなくて、ちゃんと考えて、戸柱とも意思疎通ができた共同作業での1球でした。今までできていなかったことができたので、ピッチャーとして少しレベルアップしたかなと思えて、やっぱりうれしかったですね。だから、ああいう風に両手を挙げちゃって……。戸柱にはロッカーで言われました。『甲子園で優勝したのか?』って(笑)」
走者を三塁に背負った状態からの3者三振。先頭打者に出鼻をくじかれ、そこから崩れてしまう可能性もあったが、切り替えた。
「三塁打を打たれたボールは、すごく反省しなければいけないボール。甘い球でシーズン中に同じようにやられていた配球でのスライダーでした。ただ、打たれてからは切り替えて、フォークと真っ直ぐで(勝負した)。うまく切り替えができました」
以前はうまく切り替えることができず、「どうしようもなく苦しい」時もあったという。だが、自分のやるべきことは「3アウトを取って、しっかりゲームを締める。あるいは次に繋げる」とシンプルに考え始めると、「まずい、次の打者を抑えなきゃ」というバタバタとした感情は沸かなくなった。