田口・廣岡の電撃トレード、その本質とは? データ分析の視点から見る両球団の思惑
ヤクルトは廣岡以外の遊撃手に手応えを得ている?
2020年セ・リーグ球団別遊撃手のWAR
巨人 5.9
中日 2.4
阪神 1.1
広島 0.6
DeNA -0.4
ヤクルト -0.5
このような結果を受け、昨季限りでエスコバーは退団。再び遊撃手のレギュラーは不在となり、今季、廣岡はその有力な候補と見られていた。弱点のポジションだけに、もしブレークするようなことがあれば、チームにとって大きな上積みとなる。今季のヤクルト上位浮上の鍵を握るとも言える選手であっただけに、トレードのインパクトは非常に大きい。
廣岡の放出により、ヤクルトで遊撃手を本職とする選手は実績のある西浦のほか、大卒ルーキーの元山飛優、高卒2年目の武岡龍世、長岡秀樹を残すのみとなった。田口とのトレードから推測するに、球団はこれらのメンバーにかなりの手応えを感じているのかもしれない。
また廣岡は遊撃だけでなく、二塁や三塁も守ることのできる選手である。ヤクルトのこれらのポジションを取り巻く状況の変化も、トレードへと加速させたのかもしれない。チームは昨オフ、山田哲人と7年の長期契約を結んだ。よほどのことがない限り、しばらく二塁の人材は不要となる。また三塁についても、昨季は村上宗隆が395.2イニングを守り、一定レベルの守備力を見せている。廣岡を起用するポジションが減少していたうえ、それ以外の遊撃手に一定の手応えを感じることができた結果生まれたトレードであると推測できる。
とはいえ、廣岡はかなりのポテンシャルを持った有望株である。この2年は385打席で18本塁打と、二遊間タイプの選手としては破格の長打力を有している。田口は実績のある投手であるため、今季の活躍を見込みやすいが、将来性という意味で廣岡を失うリスクは大きい。データ分析の視点からこのトレードを解釈するならば、ヤクルトは中長期的なリスクをとって、近い将来の着実な上積みを狙ったと言える。