オリックス投手の兄が掴んだ女子選抜初優勝 開志学園を頂点に導いた指導法とは?

「“女子だからこれぐらいでいいんじゃないか”というのは失礼」

 打開するため、コミュニケーションに時間を割いた。長い目で組んだ強化プランを丁寧にかつ理論的に説いていく。追い込む時期や練習量を落とす時期など、選手に体の状態を確認して話し合いながら進める。投手陣には肩、肘を強化するための目標球数を示し、週3日の場合と週2日の場合に分けて細かく管理している。

 故障者は激減し、今回の選抜大会では、本格派左腕の柳沼未歩、エース右腕の柴田琉那、制球力を誇る左腕の遠山結と3本柱がそれぞれの長所を発揮して、守備からリズムをつくった。

 失点の少なさに目が行くが、日体大時代4番に座っていた漆原監督が最も力を入れているのは打撃だ。「点を取られなければ、負けることはないですが、逆に点を取らないと勝つことはできないので。1年目から選手にはバッティングのチームを作ると伝えています」とこだわりを持つ。

 飛ばす力、確実性、状況判断など総合的に指導する。ボールに対してバットを入れるラインなどスイングの基本から、どんな打撃をしたら相手が嫌がる“打線”となるのかを選手と会話を重ね、場面を想定して取り組む。例えば、配球を読みながら自分の有利なカウントに持っていく方法、右打ちや犠飛が必要な場面でどのボールを待って「どういうスイングで打つか」といった具合だ。

「“女子だからこれぐらいでいいんじゃないか”というのは失礼。それこそが差別なんじゃないかなと思います。女の子たちが将来野球に携わってくれたら、野球人口も増えると思いますし、私が持っているものを全て教えようと思っています」と高いレベルの知識や戦術眼を惜しみなく選手に注ぎ込む。

 チームは順調にステップアップ。コロナ禍で春と夏の全国大会が中止となった昨年は、ヴィーナスリーグ(関東女子硬式野球大会)の代替大会で高校生の部、2年生以下の部、1年生の部と東日本3冠に輝いた。

 今夏の全国高校女子硬式野球選手権大会では、追われる立場になる。「まずは目の前の相手に全力でぶつかろうと選手には話しています。力のある高校が多いので、今のままでは優勝できない。攻撃も守備も新しいことに挑戦して、引き出しを加え、また別の開志学園で臨みたいと思っています」と春夏連覇へ力を込めた。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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