珍しい「6-5-3」併殺はなぜ起きた? NPBで広まってもいい「守備シフト」の有効性
守備シフトを敷く根拠となるDeNA佐野の明確なゴロ傾向
ヤクルトがこうしたシフトを敷く根拠は佐野の打球傾向にある。図には、昨季における佐野の打球がフィールドのどの位置に飛んだのかをプロットしている。プロットは緑色がゴロ、青色がフライ、赤色がライナー、黒色が本塁打を表している。
これを見ると、緑色で表した佐野のゴロはほとんどがセンターからライト寄りに飛んでいることがわかる。ライト方向に比べると、レフト方向へのゴロはわずかだ。一方、青、赤で示したフライやライナーは全方向に満遍なく散らばっている。ヤクルトはおそらくゴロの偏りに注目して、ライト寄りに内野手を集中させるシフトをとったのだろう。こうした佐野の傾向は2020年に限った話ではなく、これを見れば、定位置に固執するほうが不自然とも感じられるのではないだろうか。
もちろん打者側から見れば、こうしたシフトに対し、レフト方向を狙い打つという選択肢も存在する。そうすれば安打の確率は上がるかもしれない。ただ、佐野は昨季20本塁打を放った長打力のある打者でもある。本来のスイングから離れ、レフト方向を狙うスイングを行えば、本塁打を放つことは難しくなるだろう。
シフトを敷いたヤクルトからすると、レフト方向を狙う打撃をされたとしても、佐野の長打力を低下させるというメリットを得ることになる。そして、プロの投手の球を自在に打ち分けるのは、口で言うほど容易なことではない。レフト方向を狙ったとしても、そう簡単に安打が出るわけではないだろう。このような考えのもとで守備シフトというものは実行されている。