菊池雄星が示した投球の“深み” 世界一の打線を圧倒したリスクマネージメント

ノイジーの空振り三振に見えた確かな狙い

 4回2死三塁で迎えた7番シェルドン・ノイジーとの勝負には、その意識がはっきりと表れていた。2ボール2ストライクからの7球目に選択したのは、外角高めのボールゾーンを狙う直球。外角低めの変化球を2球続けた直後の球は効果を最大限に発揮した。釣られたバットをかすったボールが捕手のミットに収まる。この日最速の98マイル(約158キロ)で術中にはめた瞬間だった。5番マックス・マンシーにソロ本塁打を浴びた後の難局を、菊池は新機軸の投球で切り抜けた。

 得点圏に走者を置いて崩れ出す悪い傾向も、克服しつつある。

「気持ちの余裕は少しずつ出てきていると思います。ここ2、3試合では追い込んだら4球種を使えているので、バッターの反応を見ながら投げられていると思います」

 前回登板の5日(同6日)のオリオールズ戦では、入り球に使ったスライダーを意図的にワンバウンドさせ、岩隈久志特任コーチからアドバイスを受け、真上から投げ下ろす感覚でコツを得たチェンジアップにも同じアレンジを加えるなど、この日に布石を敷いた。ゾーンより高く外す直球と、ゾーンより低く曲げるスライダーも時に織り交ぜる“高低の揺さぶり”を駆使し、ド軍打線に挑んだ投球は、持ち球の4球種に新たな球種を加えたかのように「誘う」、「崩す」の深みのあるものに変わった。

あと1勝で日本人20人目となる「10勝&200奪三振」達成

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