コロナ禍で野球は必要とされるのか… 1軍復帰を目指すDeNA今永昇太の自問自答
改めて確認した野球を続ける価値「野球を見たいと思ってくれる方がいるのであれば」
怪我を経験した選手の多くは、リハビリ期間中に自身の過去・現在・未来について思いを巡らす機会を得たと話す。加えて、2020年は新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大。当たり前だと思っていた日常が実は当たり前ではなかったという現実に、誰しもが直面した。今永もまた、自身について、そして野球について、思いを巡らせたという。
「今、コロナ禍という世界情勢の中で、僕たち=プロ野球というものを考えた時、仮定の話ですけど、例えばプロ野球が1年間中止になったとしても、日本国民のほとんどは恐らく困らないと思うんです。プロ野球が中継されなくても、困る人より困らない人の方が多いはず。でも、いろいろなイベントが中止や延期となる中で、入場者数を減らしたり無観客にしたりしながらも、なんでプロ野球というものがあり続けるんだろう。そういう視点で考えた時、プロ野球は娯楽として皆さんの生活の一部になっている側面もあると思うんです。そう思って下さる方が少しでもいるのであれば、やっぱり僕たちは全力で野球をやらなければならない。野球を必要としてくれる、野球を見たいと思ってくれる方がいるのであれば、僕はリハビリをしっかり丁寧にやって、また1軍で投げている姿を届けたい。喜んでくれるファンの方々のためと思ったら、辛く地道なリハビリもあまり辛くは感じませんでした。むしろ、それが当たり前だというマインドにもなれた。そう考えると、僕にとっては自分の本質を見出してくれる時間だったのかなと思います」
マスク着用やソーシャルディスタンスが日常となり、人と人との距離感は物理的にも心理的にも変化があった。ふと周りを見回した時、改めて「僕一人が行動する裏では、いろいろな人が動いてくれている」と実感。「自ずと日頃の生活や言動が変わってくる。物事を多面的に見られるようになりました」と話す。このタイミングで選手会長という大役に任ぜられたのも、また何かの巡り合わせなのかもしれない。
「僕自身は先頭を切っていろいろな物事を発信したり、球団と選手との摺り合わせをしたりする立ち位置は、ものすごく大切だと思っているので、選手会長をすることは光栄です。だからこそ、言っていることとやっていることが矛盾していたら、僕の言葉から信憑性は失われますし、選手はそれを見抜く力がある。常に見られていることを意識しながらやろうという思いに繋がっています」
1軍復帰が目前に迫る中、今永の背中を力強く押してくれる人がいる。それはファンだ。
「ファームや1軍で、僕が投げていない試合でも、僕のユニホームを着たりタオルを掲げてくれたりするファンがいる。そういう姿を中継で見かけると、到底、弱音やネガティブな言葉を吐けるはずもない。本当に力になりました。この僕の感情を、早く1軍のマウンドでいろいろな方にお届けできたらと思います」
27歳左腕の熱い思いが届く日を、ファンは今か今かと待ち構えている。
(佐藤直子 / Naoko Sato)