打てば「神様」打たねば「犯人」 3球団経験の“渡り鳥”だから感じた阪神の魔力
首脳陣からのイジりに感謝、ムードメーカーの立場を確立
「チャンスで打ったり、試合を決めたりしたら『神様』。反面、自分が打てなくて負けたら『犯人』のような感じですからね(笑)」。駅やコンビニに並ぶスポーツ新聞の一面は、綺麗に同じ話題で揃う。結果の世界は重々承知。責任を問われるのは当然だが、その重みこそ伝統の球団たるゆえんだった。
森越氏の移籍2年目に、金本知憲監督が就任。刷新されたチームで、森越氏の“存在感”は増していった。「ありがたいことに、ヘッドにイジってもらいました」。片岡篤史氏のおかげもあって、ムードメーカーとしての役目を確立。「お前が打席に立たないことがウチの“勝ちパターン”」と言われたことを笑って思い出す。首脳陣からの期待を感じ、試合前の円陣では独壇場に。「練習2割、声出し8割でしたね、あの頃は」と冗談めかして懐かしんだ。
守備に信頼を置かれていたことが大前提にはあるが、たとえレギュラーでなくてもプロとして生き抜いていく術を見出した瞬間でもあった。平田勝男・現2軍監督から「短所は、短所じゃなく伸びしろ」と言ってもらったこともプロ人生の支えとなった。
2019年限りで関西を去り、プロとしての最終年は西武でプレー。2球団を見てきた経験は確かに蓄積され、リーグが変わってもすぐに溶け込んだ。源田壮亮や木村文紀らが積極的に声をかけてくれたのがありがたかった。「それぞれの球団で、本当いろんな人にお世話になりました」。10年間で3球団。“渡り鳥”だったからこそ、見えた様々な景色だった。