「自分が勝ちたい」から、「選手が勝ちたい」へ 日本一慶大・堀井監督の指導
社会人時代に日本一経験も、「手作りで一緒に作った優勝は感慨深い」
その思いがさらに強くなった出来事もある。三菱自動車岡崎が活動休止になり、仕事で会社に貢献しようとした時、JR東日本から監督として声がかかった。
「就任依頼が来たとき、自分の都合で野球をやるんじゃないと思いましたね。野球界に恩返ししなくてはならないと思うようになりました」。JR東日本の監督に就任すると、2011年には都市対抗野球大会優勝。慶大の監督の就任依頼された時も、「野球への貢献」の思いで引き受けた。
選手の勝ちをサポートするためには、選手自身が勝ちたいという気持ちを強く持つことが大切だ。堀井監督がその強い気持ちを感じたのは、昨秋の東京六大学野球リーグ戦の後だった。最終戦の早慶戦。優勝がかかった試合で9回に早大・蛭間に逆転2ランを打たれた。その翌日、主将の福井章吾捕手(3年)が、監督に負けた原因や今後のチーム作りを提案してきた。
「負けた翌日から次勝つことを考えていた。だから、今年はいけるのではないかという感じはしました」
予想通り、春季リーグ戦を勝ち抜くと、大学野球選手権では34年ぶりの日本一。JR東日本時代に都市対抗野球で優勝した時とは違う感触があった。
「社会人は会社のバックアップもあるが、大学生はそうではない。手作りで一緒に作った優勝というのは感慨深いものがある」
それでも、優勝はあくまで「通過点」だと話す。選手らをサポートし、大学野球を全うさせるのが監督の役目だ。慶大を34年ぶり優勝に導いた男は、もう次のステージを見据えていた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)