春夏甲子園Vもイップスも「天国から地獄まで経験した」 指導者として生きる“武器”

コロナ禍で自主練期間も「創意工夫すれば内容の濃い練習はできる」

 たった4か月では選手全員の心を掴み切れないのは当然だ。しかし、この短期間で選手たちと嫌というほど触れ合うことができた。島袋氏の野球人生の中でも最も充足し、潤いを与えてくれた期間でもあった。

 2020年4月1日に興南高の職員となった島袋氏は2021年2月上旬に学生野球資格回復者として認定されるまで、野球部員と一切接触できなかった。廊下ですれ違っても面と向かって挨拶することもできず、野球部の練習も隠れるように見ていただけだった。心が締め付けられ、歯がゆかった。

 いくら知識を覚えてもそれを使いこなす場がなければ机上の空論と同じように、外側から試合を観ながら多角的に各選手のデータを分析しても、それを直接本人に効果的に伝えけなれば何の意味もなさない。現場でともに汗を流し、選手たちの息吹を感じることで閃くのが指導者でもある。島袋はつくづくグラウンドに立つ重要性を知った。

 しかし、島袋氏がコーチとして現場復帰した沖縄は、安穏と野球ができる状況ではなかった。4月12日にまん延防止等重点措置が施行され、5月23日から延長を含め7月11日まで緊急事態宣言が発令され、全国で最も長期間にわたる宣言の対象地域に。夏大会に向かっての大事な期間をどういった形で練習してきたのだろうか。

「復帰した時からすでに練習時間は短縮され、練習試合もできない状態でした。5月23日に緊急事態宣言が発令され、6月5日から20日まで休校になったため部活動もできず自主練という形を取りました。今回のコロナ禍によって短縮された練習時間を当たり前だと思ってやるのは絶対違います。どんなことがあっても言い訳はしてほしくない。例え短い時間でも創意工夫してやっていけば、内容の濃い練習はできます。どんなことであれ自分の限界の最大値を大きくする。状況は他の高校も一緒ですから」

2010年春夏全国制覇も大学ではイップスに苦しむ

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