公立進学校の静岡高を7度甲子園に 名将が明かす「心に火をつける」指導とは?

「全ての選手に役どころをつくろうと心掛けました」

 練習後、大野監督は足を怪我していたエースを車で自宅まで送り届けた。大野監督は車内で「こいつは俺のことをタクシーだと思っているんですよ」と笑う。栗林氏は練習で見せる厳しさとのギャップに「選手の懐にスッと入っていけるのは、日頃から選手のことを考えて、大切にしているからだと学びました」と指導のヒントを得た。

「とにかく結果を出さないといけないと思っていましたが、そうではありませんでした。選手を大切に育てることで、結果は後からついてくる。もし選手のためにやった上で結果が出なかったとしても、何も恥ずかしいことはないと考えるようになりました。考え方を変えたら不思議と結果が出始めました」

 今治西を訪問してから1年半後の夏、栗林氏は就任4年目で初めて甲子園切符をつかんだ。そこから、昨年退任するまで、春夏合わせて7度の甲子園出場を果たした。指導の根本にしたのが「心に火をつける」、「個々の長所を生かす」という2つのポイント。控え選手の生かし方は指導の特徴だった。

「長所を磨くと個性になる。個性を磨くと武器になる。長所を見極めて個々の武器で勝負させる、全ての選手に役どころをつくろうと心掛けました」

 中にはプレーヤーではなく、スコアラーに適性があり、やりがいを見出せると感じた選手もいた。データの蓄積がいかに大切かを伝えると、その選手は期待以上の仕事で応えた。打率や本塁打、打点といった基本的な数字を入力するだけでなく、変化球に対する打率や左右投手別の打率、四死球による出塁率など、自主的にチームメートの特徴を分析した。試合中もベンチで相手バッテリーの傾向を味方に伝え、チームの頭脳となった。

「控え選手が重要な役割を担うと、チーム力は上がります」

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