中日投手陣が甲子園の“苦手”を払拭できたワケ 前投手コーチが明かした裏話の数々

3年間で最も嬉しかった試合は「(木下)雄介の追悼試合です」

 若手のことも気にかけていた。

「清水(達也)は肩を故障して、時間がかかりました。彼は典型的なフォークボーラー。どんどん振ってくるパ・リーグやDeNA打線に合います。自分の特性を早く理解してほしいし、先発かリリーフかの見極めも大切。山本(拓実)もそう。今年はオリックスの山本由伸を手本に色々と取り組みましたが、やはりタイプが違う。私はずっと谷元(圭介)とのキャッチボールを勧めていました。低いリリースポイントからホップするストレートに変化量の大きい曲がり球がある。彼もどこで生きるかですね」

 梅津晃大の浮上の鍵は心だ。

「マウンドでネガティブな思考が大きくなるタイプです。その不安要素を払しょくしようと、毎日投げたがる。すると、フォームを崩したり、怪我をしたりと悪循環に陥る。技術は高いし、フォークもあります。来年、1軍のオープン戦でどれだけ結果を出せるかですね。そこで自信を持てば、一気に開花するでしょう。2軍で抑えても、不安は消えないものです」

 最後に3年間で一番嬉しかった試合を聞いた。

「(木下)雄介の追悼試合です。(ジャリエル)ロドリゲスが先発して、田島(慎二)、祖父江(大輔)、又吉、ライデル(マルティネス)がゼロで帰って来ました。感動しました。試合前は『雄介が倒れたのは練習中。だから、きっと最後の意識は復活したい、投げたいだったはず。その思いを背負って、マウンドに上がろう』とだけ言いました。それ以上は何も。みんなの方が雄介との時間は長いし、それぞれ胸に期するものがありますから」

 ユニホームを脱ぎ、来年は外からプロ野球を見守る阿波野氏。その目は優しく、温かく、鋭いに違いない。近い将来、ゲストとラジオパーソナリティという関係ではなく、解説と実況で共演したいものだ。

(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。テレビの情報番組の司会やレポーターを担当。また、ラジオの音楽番組のパーソナリティーとして1500組のアーティストにインタビュー。2004年、JNN系アノンシスト賞ラジオフリートーク部門優秀賞。2005年、2015年、同テレビフリートーク部門優秀賞受賞。2006年からはプロ野球の実況中継を担当。現在の担当番組は、テレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜12時54分~)「High FIVE!!」(毎週土曜17時00分~)、ラジオ「若狭敬一のスポ音」(毎週土曜12時20分~)「ドラ魂キング」(毎週金曜16時~)など。著書「サンドラのドラゴンズ論」(中日新聞社)。

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