開幕ローテ入りも初先発で右肘がプチッ… DeNA右腕の後悔とリハビリで得た未来像
自分と向き合う時間で気付いた「強さ」の重要性
時間が経てば痛みが引くかもしれないと淡い望みを抱くも、病院で見たエコー画像では明らかに靱帯部分が緩んでいる。さらには、最後に投げた中日戦では「100の力で投げることができなかった」。全力を出さずに乗り切れるほどプロの世界は甘くない。決心するまで2か月を要したが、手術を受けることにした。
今でこそ、トミー・ジョン手術という言葉はよく聞くが、実際に手術を受けるとなれば話は別。「正直、どういう手術かあまり理解できていなかったです」という平良にとって大きな支えとなったのが、田中健二朗と東克樹からのアドバイスだった。田中健は2019年、東は2020年に同手術を受け、今季揃って1軍復帰を果たしている。
「手術した人の意見はすごく大事にしました。2人の話を聞いて、これはもう受けた方がいいと。手術後の様子も間近で見ていたので、何が起こるのか、ある程度分かっている。『こういうものだよ』と教えてもらったので、だいぶ気持ちが楽になりました」
手術後は4か月ほどボールを握らない日々を過ごした。「シャドウとか腕を振ることもダメ。小学生で野球を始めてから、そんなことはなかったので辛い部分でした」と振り返る。野球をしたくてもできない時間は、色々なことに想いを巡らせた。
「この半年は自分を見つめ直す時間でしたね。まず、この年齢まで野球を続けていられることに感謝しました。色々な人に支えられて野球ができていた。高校から巨人にドラフトされて、ベイスターズに移籍して、なかなか濃い8年を過ごせている。でも、やっぱり怪我が多いと感じるので、リハビリ中に1年しっかりローテを守れる強い体にしようと決めました」
怪我なく長いキャリアを送っている選手のことを考えた時、「みんな体がしっかりしている」ことに気が付いた。巨人時代、一緒に自主トレをした内海哲也は「メチャクチャ体がデカいのに凄く走れるし、体幹も強かった」という。「あの時、『いっぱい食えよ』と食べさせてもらっていたんですけど、食べるのが辛くて(笑)。ただ、今思えば、そういうことが体作りに繋がっているんじゃないかと思います」。手術後は大きくても動ける体を目指し、良質な食事を「しっかり食べてしっかりトレーニング」。その結果、5キロの増量に成功した。
強い体で目指すのは、球の強さが際立つピッチングだ。コントロール良く低めに集めるスタイルを変えるつもりはない。
「低めの制球でボール自体に強さがあったり、あと1キロでも2キロでも球速が上がれば、バッターが嫌がってくれるんじゃないかと。ピッチングの幅が広がって、真っ直ぐを使って効果的に攻められる。体もピッチングも強さを出していきたいですね」